「上腕三頭筋の長頭を狙うなら、腕を上げて行う種目」という説明があります。2026年8月14日時点で取得できた上位4記事のうち、2件が「長頭がターゲット」と書いており、うち1件は「肩関節にまたがる二関節筋であるため、腕を挙げて肘を曲げるとストレッチ刺激が入る」と機序まで説明しています。
この説明のうち「長頭がよく働く」という部分は、単回の測定では支持されません。 腕を上げた位置(肩90度以上)で推定筋力が最も高かったのは、長頭ではなく内側頭だったという研究があります。
一方で、12週間トレーニングした研究では、腕を上げた条件のほうが上腕三頭筋がよく増えました。長頭も含めてです。
この2つは矛盾していません。測っているものが違います。 そしてこの違いは、種目の選び方に直接関わります。
1. 種目名を整理します
上位4記事は、この動作に別々の呼び方を使っていました。 対応関係を整理していた記事は0件です(2026年8月14日時点)。
| 呼び方 | 上位記事での使われ方 |
| オーバーヘッドエクステンション | この記事の主表記 |
| オーバーヘッドトライセプスエクステンション | 頭上で行う動作を指しています |
| フレンチプレス | 上位1位の記事が、頭上で行う動作の別名として併記しています |
| ケーブルトライセプスエクステンション | 上位記事ではケーブルで頭上から行う動作を指していますが、この名前は体の前で肘を伸ばす種目に使われることもあります |
| アームエクステンション | 上位記事ではマシンの名前として使われています。指す動作は機種によって異なります |
この記事が扱うのは、「腕を頭上に上げた状態から肘を伸ばす」動作です。 呼び方が上の表と一致していても、実際の動作が違う場合があります。
検索結果には、「Overhead Extension」という同名のマシン製品も出てきます。これは大胸筋のマシンで、上腕三頭筋の種目ではありません。 名前が衝突しているだけです。
また、寝た状態で行うスカルクラッシャー(ライイングトライセプスエクステンション)は、肩の角度が違うため別の種目として扱います。
2. どこに効くのか
上腕三頭筋は3つの部分に分かれます。
| 部分 | 起始(始まる場所) | 特徴 |
| 長頭 | 肩甲骨 | 肩をまたぐため、肩の動きで長さが変わります(二関節筋) |
| 外側頭 | 上腕骨 | 肘のみをまたぐ |
| 内側頭 | 上腕骨 | 肘のみをまたぐ |
「長頭だけが肩をまたいでいる」という点が、この種目の説明の中心にあります。
上位4記事のうち、この3つを区別していたのは2件でした。そのうち機序まで説明していたのは1件のみで、「肩関節にまたがる二関節筋であるため、腕を挙げて肘を曲げるとストレッチ刺激が入る」と書いています。ただし出典は示されていません。
3. 「長頭を狙える」という説明の検証

筋の長さについては、この説明は研究と一致します。しかし「よく働く」かどうかは別です。
3-1. 肩の角度で、主役が入れ替わります
健常者10名(男性8名・女性2名、23〜45歳、平均29.2歳)を対象に、肩の挙上角度を0/45/90/135/180度に変えて肘を伸ばし、筋の力と活動を測定した研究があります。
「肩挙上0度では、上腕三頭筋長頭が外側頭・内側頭より有意に高い筋力と筋活動を生む(p<0.05)。一方90度・135度・180度の肩挙上では、内側頭が長頭・外側頭より有意に高い筋力を示した(p<0.05)」
出典:Kholinne E, et al. Acta Orthop Traumatol Turc, 52(3), 201-205, 2018年(PMID: 29503079、全文 )。利益相反なしと明記されています。 資金は韓国科学技術情報通信部。
筋の長さについては、肩を屈曲させると有意に長くなったのは長頭だけで、外側頭・内側頭はどの角度でも有意に変わりませんでした。
つまり「腕を上げると長頭が伸ばされる」という部分は、この研究と一致します。
しかし「だから長頭がよく働く」という部分は、この研究の結果と逆です。 著者は機序を次のように説明しています。
「長頭がその最大長まで伸張されると、Blix曲線に従って能動張力の発生が減少する。この張力の損失を補うため、内側頭と外側頭がより大きな力を発生する」
これは著者による機序の説明であり、力の発揮しにくさそのものを直接測定した結果ではありません。
(1)対象は10名で、著者自身が「被験者数の少なさ」を最も顕著な限界として挙げています。
(2)単回の測定です。 長期的にどの部分が太くなるかを示したものではありません。
(3)筋の力は、加速度計と筋電図のデータをコンピュータモデル(OpenSim)に入力して推定されたものです。 直接測定された値ではありません。
(4)著者は、肘を伸ばす速度が被験者のリズム能力に依存することも限界として挙げています。
3-2. ここまでで言えること
| 説明 | 研究との関係 |
| 「腕を上げると長頭が伸ばされる」 | 一致します(長さが有意に変わるのは長頭のみ) |
| 「だから長頭がよく働く」 | この研究の結果とは逆です(肩90/135/180度では内側頭の推定筋力が他の2つより有意に高い) |
上位記事が「長頭を狙える」と書くとき、この2つが区別されていません。
4. 12週間の研究では逆の結果です
ここまでは単回の測定の話です。長期の結果は別でした。
健常若年成人21名(男性14名 23.0±1.4歳・女性7名 24.3±1.6歳、全員が過去12か月間いかなる体系的なレジスタンストレーニングにも参加していない未鍛錬者)を対象に、左右の腕に別々の条件を割り付けて12週間トレーニングした研究があります。MRIで筋体積を測定しています。
| 測定部位 | オーバーヘッド(肩180度屈曲) | 腕を体側に下ろした位置(肩0度) | 差 |
| 上腕三頭筋 全体 | +19.9% | +13.9% | – |
| 長頭 | +28.5%(+50.6±30.6 cm³) | +19.6%(+34.5±21.2 cm³) | 1.5倍(d=0.61、P<0.001) |
| 外側頭+内側頭 | +14.6%(+42.1±33.4 cm³) | +10.5%(+30.4±26.9 cm³) | 1.4倍 |
そして重要な点があります。オーバーヘッド条件で使われた絶対負荷は、もう一方より34〜39%低いものでした。 抄録には「より低い絶対負荷を用いたにもかかわらず(even with lower absolute loads used during the training)」と書かれています。
出典:Maeo S, et al. Eur J Sport Sci, 23(7), 1240-1250, 2023年(PMID: 35819335、PubMed )。利益相反なしと明記されています。 資金はデサントおよび石本記念デサントスポーツ科学振興財団(2019-20)。
4-1. 著者自身が「筋長仮説だけでは説明できない」と書いています
この研究で最も重要なのは、著者の考察です。
肩をまたがない外側頭・内側頭は、どちらの条件でも筋の長さが変わらないはずです。それなのに、オーバーヘッド側のほうが大きく増えました。
著者はこれを自らの仮説の否定(”refuted our second hypothesis”)と記したうえで、「オーバーヘッド姿勢の維持に伴う筋血流の減少」が代謝ストレスを高めた可能性を挙げ、次のように書いています。
「これらの機序がどの程度影響したかは不明であり、オーバーヘッド条件での長い筋長でのトレーニングそのものが長頭の肥大に影響を与えなかった可能性を否定できない」
つまり「引き伸ばされた状態で行ったから長頭が増えた」という説明を、著者自身が確定していません。
(1)この結果を再現した独立の研究を、当サイトでは確認できていません。 オーバーヘッドとニュートラルの上腕三頭筋の肥大を比較した研究は、確認できた範囲でこの1件のみです。
(2)対象は全員が未鍛錬者です。 トレーニング経験者に同じことが起きるかは示されていません。
(3)抄録・結果と考察で数値が食い違っています。 抄録と結果は+13.9%、考察は+13.5%と書かれています。この記事では抄録・結果の数値を採っています。
(4)この論文には、有害事象・脱落・肩や肘の痛みに関する記載が一切ありません。 したがってこの研究を「オーバーヘッドで行っても肩や肘に問題が起きない」という根拠には使えません。
4-2. この研究は「プッシュダウンとの比較」ではありません
この研究が比較したのは、肩の角度です。器具や種目の比較ではありません。
比較されたのは「肩180度屈曲(オーバーヘッド)」と「肩0度(腕を体側に下ろした位置)」です。 肘の可動範囲は両条件とも90〜0度、手首は回外位に保持され、肩の角度は固定されています。
原典に「プッシュダウン(pushdown)」という語はありません。
プッシュダウンは体の前で肘を伸ばす種目で、この研究の「肩0度」条件とは動作が異なります。
4-3. 2つの研究を並べると
| 研究 | 測ったもの | 結果 |
| Kholinne 2018 | 単回の推定筋力・筋活動 | 腕を上げた位置では内側頭の推定筋力が最も高い |
| Maeo 2023 | 12週間の筋体積の変化 | 腕を上げた条件のほうが長頭がよく増えた |
矛盾していません。測っているものが違います。
この2つから言えるのは、次までです。
- 腕を上げた位置では、内側頭の推定筋力が長頭・外側頭より有意に高くなりました(Kholinne 2018、健常者10名。筋力はコンピュータモデルによる推定です)。著者はこれを、伸ばされた長頭が力を出しにくくなった分を他の2つが補ったと説明していますが、これは機序の説明であって測定結果ではありません
- それでも12週間の介入では、腕を上げた条件のほうが上腕三頭筋がよく増えました(Maeo 2023、未鍛錬者21名)
- その理由について、Maeo 2023 の著者自身が確定していないと述べています
したがって「腕を上げると長頭がよく働くから効く」という説明は、これらの研究に支持されていません。
一方で、腕を上げる種目に意味がないということでもありません。 Maeo 2023 は12週間の介入で腕を上げた条件のほうが上腕三頭筋がよく増えたことを報告しています。ただしこれは未鍛錬者21名を対象とした1件の研究であり、再現した独立の研究を当サイトでは確認できていません。
5. プッシュダウンとの使い分け
上位4記事のうち、プッシュダウンとの比較を行っていた記事は0件でした。
| 肩の位置 | 長頭の状態 | |
| オーバーヘッドエクステンション | 頭上(屈曲) | 伸ばされる |
| プッシュダウン | 体の前(ほぼ0度付近) | 伸ばされない |
| キックバック | 後方(伸展) | 縮む |
この3つを直接比較した研究を、当サイトでは確認できていません。
5-1. プッシュダウンについて分かっていること
健常・未鍛錬・活動的な男子大学生25名(23.8±3.6歳)を対象に、プッシュダウンの強度と速度を変えて筋電図を測定した研究があります。ストレートバーを両手・回内位・肩幅で保持し、体幹をわずかに前傾させた姿勢です。
「運動強度の変化は上腕三頭筋の3つすべてに影響するが、速度は外側頭と長頭にのみ影響する」
著者の実践的な結論は次のとおりです。
「運動速度の変化は筋の活性化に影響しないが、時間的負荷(time under tension)に影響しうる。したがってトレーナーは速度ではなく運動強度に注目するとよい」
出典:Hussain J, et al. Front Physiol, 11:112, 2020年(PMID: 32153422、全文 )。利益相反なしと明記されています。 資金の節はなく、謝辞に研究施設の提供元(マレーシア・UTeM)の記載があるのみです。
1つ目は「速度が外側頭と長頭に影響する」、2つ目は「速度は筋の活性化に影響しない」と読め、一見すると食い違って見えます。
これは当サイトが要約した結果ではなく、原典に両方の記述が存在します。 前者は3つの部分それぞれについての統計的な検定結果、後者は実践的な推奨としての結論と読めますが、著者がこの2つの関係を説明している箇所を、当サイトでは確認できませんでした。
したがってこの記事では、速度についてどちらかの立場を採りません。
この論文には限界を記した節がありません。 全被験者が未鍛錬の男性であること、単回の筋電図測定であること、プッシュダウン単独の研究で他種目と比較していないことは、読む側で補う必要があります。なおデータは、マレーシア医学研究倫理委員会の制限により非公開とされています。
5-2. グリップについて
プッシュダウンのグリップを比べた研究があります。成人22名(女性11名・男性11名、25.4±3.15歳、うち13名が6か月以上の筋トレ経験あり、9名は未経験者)を対象に、順手/逆手×ハンドル/ストラップの4条件を比較したものです。
長頭の活動は逆手ハンドルが最も高いという結果でしたが、順手ハンドルとの差は効果量0.53・p=0.038(中程度)にとどまりました。外側頭は逆手80.7%と順手77.1%で有意差がありませんでした。
出典:Villalba MM, et al. Int J Strength Cond, 4(1), 2024年(DOI: 10.47206/ijsc.v4i1.250、原典 )。資金はブラジル国立科学技術開発審議会ほか。
(1)抄録と本文が食い違っています。 抄録は「逆手ハンドルが他のすべての条件より高い(p<0.001)」と書いていますが、本文では順手ハンドルとの差はp=0.038で、p<0.001なのはストラップ2条件に対してのみです。「逆手が圧倒的」とは書けません。
(2)比較したのは「ハンドル vs 手首に巻くパッド付きストラップ」であり、「ロープ vs ストレートバー」ではありません。
(3)著者自身が「筋電活動の変化は急性のものであり、グリップの変更が長期的なトレーニング後の筋力増加や筋肥大の差を必ずしも意味しない」と明記しています。
(4)著者が挙げているその他の限界: 全反復をまとめて解析しており反復間の変化を考慮していないこと、トレーニング経験者と未経験者を分けて解析していないこと、全条件で同じ絶対負荷を用いたため相対強度が条件間で異なった可能性があること、速度は制御したが角速度は測定していないこと。なお、この論文には利益相反を開示する節がありません。
上位記事のうち1件が「ロープが推奨(手首の角度が自由)、安定感が必要ならバー」と書いています。ロープとストレートバーを統計的に比較した査読論文を、当サイトでは確認できていません。
5-3. 8種目を並べたデータ
上腕三頭筋の8種目を筋電図で比べたデータがあります。ただし査読を経た論文ではなく修士論文です。
三角腕立て伏せを100として正規化した値です(長頭と外側頭を合わせた合計値)。
| 種目 | 相対値 |
| 三角腕立て伏せ | 100 |
| キックバック | 87 ± 26.58 |
| ディップス | 87 ± 19.87 |
| オーバーヘッドエクステンション | 76 ± 16.09 |
| ローププッシュダウン | 74 ± 22.64 |
| バープッシュダウン | 67 ± 20.48 |
| ライイングバーベルエクステンション | 62 ± 16.25 |
| クローズグリップベンチプレス | 62 ± 15.88 |
出典:Boehler B. University of Wisconsin-La Crosse 修士論文, 2011年(原典 )
(1)査読論文ではありません。
(2)対象は女子大学生15名のみ(21.5±1.36歳、挙上経験あり)です。
(3)負荷が揃っていません。 ウェイトを使う種目は70%1RMですが、三角腕立て伏せとディップスは自重です。
(4)ロープとバーは直接比較されていません。 統計比較は「各種目 vs 三角腕立て伏せ」と「長頭 vs 外側頭」のみです。「ロープ74 vs バー67だからロープが優れる」とは書けません。 また内側頭は測定されていません。
(5)単回の筋電図測定です。 長期的な筋肥大や筋力の増加を測ったものではありません。
著者自身の結論は「三角腕立て伏せ・ディップス・キックバックは互換的に使える」というものです。
6. やり方

上位4記事は共通項が少なく、全記事が一致した項目はありませんでした。 以下は3件以上が挙げていた項目と、1件のみが挙げていた項目を分けて示します。
6-1. 手順
ダンベルの場合
- 背もたれのあるベンチに座るか、立ちます(上位記事の1件は座位を指定していますが、その理由は書かれていません)
- 1つのダンベルを両手で持ち、頭上に構えます(プレートの縁を両手で下から支える持ち方が一般的です)
- 肘を曲げて、頭の後ろへ下ろします
- 肘の位置を変えずに、肘を伸ばします
- 反動を使わずに戻します(上位3件が言及)
ケーブルの場合
- 滑車を最も低い位置に設定し、ロープまたはバーを取り付けます
- マシンに背を向けて立ち、アタッチメントを持って頭の後ろに構えます
- 以降はダンベルと同じです
この2つの手順は、上位記事の記述と一般的な実施方法をまとめたものです。器具ごとの設定を比較した資料は確認できていません。
6-2. 上位記事が挙げていた注意点
| 注意点 | 挙げていた記事数 |
| 反動を使わない/コントロールする | 3件 |
| 背中を丸めない/腰を反らせない | 2件 |
| 肘を開かない(頭に近く保つ) | 1件 |
| 肩関節のウォームアップを事前に行う | 1件 |
| 収縮位で1秒キープ | 1件 |
「肘を伸ばしきる」かどうかについて、指示が分かれています。
このキーワードの上位記事のうち1件は「肘を伸ばしきった際に無理に力を入れすぎない」としています。一方、キックバックのキーワードでは上位8記事のうち4件が「肘を伸ばしきる」と書いています。
どちらが良いかを比較した資料を、当サイトでは確認できていません。
6-3. 頭上で行うことの前提
この種目は、腕を頭上まで上げられることが前提です。 上位4記事のうち、肩のウォームアップに触れていたのは1件のみで、肩の可動域が足りない場合の代替について書いた記事は0件でした。
腕を真上に上げられない場合や、上げると肩に痛みが出る場合は、この種目を無理に行わないでください。 プッシュダウンやキックバックのように、腕を上げずに行う種目があります。
痛みが続く場合は整形外科を受診してください。
7. 回数・セット数・頻度・重量
この種目を対象に回数・セット数・頻度・重量を比較した研究を、当サイトでは確認できていません。 以下はトレーニング全体または筋群単位で示された一般的な指針です。
| 項目 | 目安 | 出典 |
| 回数 | Novice(初心者)で8〜12RM | ACSM 2009年版 |
| セット数 | 筋群あたり週約10セットが筋肥大の目安 | ACSM 2026年版 |
| 頻度 | 週2〜3回(Novice、トレーニング全体として) | ACSM 2009年版 |
| 負荷の漸増 | 目標回数より1〜2回多くできるようになったら2〜10%増やす | ACSM 2009年版 |
| セット間の休憩 | 筋力3〜5分/筋肥大1〜2分/筋持久力90秒未満 | ACSM 2009年版 |
出典:American College of Sports Medicine. Med Sci Sports Exerc, 41(3), 687-708, 2009年/ACSM Position Stand(Currier BS ほか、統括 Phillips SM)Med Sci Sports Exerc, 58(4), 2026年(PMC12965823の全文 )
ACSMのポジションスタンドは、健常成人を対象とした研究群をまとめて作られた、トレーニング全体に対する指針です。 特定の種目について最適な重量・回数・頻度を示したものではありません。
上の数値はこの種目に対して検証されたものではなく、出発点として使うものです。
上位4記事のうち、回数を書いていたのは2件(10〜12回/10〜15回)、セット数を書いていたのは2件(いずれも3セット)でした。インターバルと頻度を書いた記事は0件です。
7-1. 重量について
上位4記事のうち、重量に触れていたのは1件のみでした。その1件は「筋肥大=体重×0.4〜0.5、引き締め=体重×0.2〜0.3」(ケーブル)としています。
当サイトでは、この体重比の根拠を確認できませんでした。 また、ケーブルのウェイトスタックの表示重量を指すのか、滑車を考慮した実際の負荷を指すのかも明記されていません。
したがってこの記事では体重比を採らず、上の表の原則(8〜12回で限界になる重量から始め、1〜2回多くできるようになったら2〜10%増やす)で決めることを勧めます。
頭の後ろに重りを下ろす種目です。 扱えなくなった場合に安全に降ろせるかを考えて重量を決めてください。
頭の後ろで支えきれなくなったときにどうするかを、始める前に決めておいてください。 これは器具の優劣ではなく、頭上で重りを扱う種目に共通する準備です。
なおこの種目で肘や肩にかかる負担を測定した研究を、当サイトでは確認できていません。
8. 器具の選び方
上位4記事のうち、器具の選択基準を体系的に書いた記事は0件でした。
| 器具 | 特徴 |
| ケーブル | 引く方向に沿って負荷がかかります |
| ダンベル | 真下に落ちようとするため、動作中の負荷のかかり方が前腕の向きによって変わります |
| EZバー・バーベル | 両手で保持できます |
| マシン | 軌道が決まっています |
上腕三頭筋の種目をダンベルとケーブル(またはゴムバンド)で比較した研究、およびロープとストレートバーを統計的に比較した査読論文を、当サイトでは確認できませんでした。 4-2で見たとおり、Maeo 2023 が比較したのは器具ではなく肩の角度です。
ただし他の部位では、比較した研究があります。
三角筋(肩)では、レジスタンストレーニング経験のある男女24名を対象にラテラルレイズをダンベルとケーブルで8週間行い、超音波で筋厚を測定した研究があります。肩関節の可動域は両条件で標準化されています。
「我々のデータは、ダンベルとケーブルのラテラルレイズが、レジスタンストレーニング経験者の三角筋中部の筋肥大を増やすうえで同程度に有効であることを示唆する」
筋厚はどちらも3.3〜4.6%増加し、条件間に差はありませんでした。
出典:Larsen S, et al. Front Physiol, 2025年(PMID: 40692697、全文 )
ただしこれは三角筋の研究です。また著者の1名が、ケーブル型トレーニング機器メーカーの科学諮問委員を過去に務めていたと申告しています。
またマシンとフリーウェイトを比較したメタ解析でも、「運動様式間で、パワーの変化(効果量 −0.049)にも筋肥大(効果量 −0.01、95%CI −0.525〜0.545)にも差はなかった」と報告されています(Heidel KA, Novak ZJ, Dankel SJ. J Sports Med Phys Fitness, 2022年、PMID: 34609100、PubMed )。ただし筋力についてはテストする様式に有利な結果が出ることが示されています。また、このメタ解析は上腕三頭筋を対象としたものではなく、運動様式全般を比べたものです。著者が明記した限界・利益相反・資金源は確認できていません。
これらは器具そのものが筋肥大の差を生むわけではないことを示唆しますが、この種目で確かめられたわけではありません。したがって「どの器具が最も効く」とは、当サイトでは書けません。
9. よくある質問
- 本当に長頭に効きますか?
-
「腕を上げると長頭が伸ばされる」という部分は研究と一致します(肩を屈曲させると長さが有意に変わったのは長頭のみ)。しかし「だから長頭がよく働く」という部分は、この研究の結果と逆です。 肩90/135/180度では内側頭の推定筋力が他の2つより有意に高かったという結果が報告されています(健常者10名、単回の測定、3-1)。一方12週間の介入では腕を上げた条件のほうが長頭がよく増えましたが、その機序について著者自身が確定していないと述べています(4-1)。
- プッシュダウンとどちらがいいですか?
-
この2つを直接比較した研究を、当サイトでは確認できていません(5章)。4章で挙げた12週間の研究が比較したのは肩の角度であって種目ではなく、原典に「プッシュダウン」という語はありません(4-2)。
- フレンチプレスとは違う種目ですか?
-
同じ動作を指します(1章)。このキーワードの上位1位の記事も、両方の名前を併記しています。ただし「Overhead Extension」という同名の大胸筋マシンが別に存在するため、器具の名前として見かけた場合は注意してください。
- ロープとバーはどちらがいいですか?
-
ロープとストレートバーを統計的に比較した査読論文を、当サイトでは確認できていません(5-3)。数値を出している資料はありますが、修士論文であり、かつ両者は直接比較されていません。
- 何回・何セットやればいいですか?
-
この種目を対象に検証した研究は確認できていません。 ACSM 2009年版が初心者向けに示している8〜12RMが出発点になりますが、これはトレーニング全体に対する一般的な指針です(7章)。なお上位4記事のうち回数を書いていたのは2件のみでした。
- 週に何回やっていいですか?
-
上位4記事のうち、頻度を書いていた記事は0件でした。 また上腕三頭筋の最適な頻度を主目的に検証した研究も確認できませんでした。ただし25件を統合したメタ解析は「総量を揃えた場合、レジスタンストレーニングの頻度が筋肥大に有意または意味のある影響を与えないという強いエビデンスがある」と結論しています(Schoenfeld BJ, Grgic J, Krieger J. J Sports Sci, 2019年、PMID: 30558493。抄録のみの確認で、著者が明記した限界・利益相反・資金源は確認できていません)。週の合計セット数が同じなら、それを何回に分けるかは好みで決めてよい、というのが現時点で確認できる範囲です。
- 重量はどれくらいですか?
-
上位記事で重量に触れていたのは1件のみで、その根拠を当サイトでは確認できませんでした(7-1)。8〜12回で限界になる重量から始めてください。 頭の後ろに重りを下ろす種目のため、扱えなくなった場合に安全に降ろせるかも考慮してください。
- 肩が痛くて腕が上がりません。
-
この種目は腕を頭上まで上げられることが前提です。 上げると痛みが出る場合は無理に行わず、腕を上げずに行う種目(プッシュダウン、キックバック)を検討してください。痛みが続く場合は整形外科を受診してください。 なお上位4記事のうち、肩の可動域が足りない場合の代替について書いた記事は0件でした。
- 肘が痛くなります。
-
この種目と肘の痛みの関係を扱った資料を、当サイトでは確認できていません。 上位4記事にも記載はありませんでした。痛みが続く場合は整形外科を受診してください。
10. まとめ
- 同じ動作に5通り以上の呼び方があります。 上位4記事のうち整理していた記事は0件でした
- 「腕を上げると長頭が伸ばされる」は研究と一致します。 しかし「だから長頭がよく働く」はその研究の結果と逆で、肩90/135/180度では内側頭の推定筋力が他の2つより有意に高いという結果でした(健常者10名、単回の測定)
- 12週間の介入では、腕を上げた条件のほうが上腕三頭筋がよく増えました(+19.9% vs +13.9%)。ただし著者自身が機序を確定していないと述べており、再現した独立の研究も確認できていません
- その12週間の研究が比較したのは肩の角度で、種目や器具ではありません。 比較されたのは肩180度と肩0度で、原典に「プッシュダウン」の語はありません
- 器具による違いを比較した研究は確認できていません
- 腕を頭上に上げられることが前提の種目です。 痛みが出る場合は行わないでください
同じ上腕三頭筋の種目はキックバック、腕の反対側はハンマーカール・プリーチャーカール、多関節種目は腕立て伏せの記事があります。ジム全体のメニューはジムの筋トレメニュー、マシンの種類はトレーニングマシンの種類一覧にまとめています。
本記事で「上位記事」と書いている箇所は、2026年8月14日時点でGoogle検索(日本)の上位に表示されていた記事を指します。検索結果は日々変動するため、現在の表示順とは異なる場合があります。
痛みがある場合、既往がある場合、持病がある場合は、トレーニングの前に医師にご相談ください。 この記事は診断・治療を目的としたものではありません。
