ショルダープレスは、重量を頭上へ押し上げる種目です。器具はバーベル・マシン・ダンベル・スミスマシンのいずれでも行えます。
この記事はバーベルとマシンを扱います。 ダンベル版は重量の判定基準・ベンチの角度・立位か座位かまで含めてダンベルショルダープレスの記事にまとめているので、そちらを参照してください。
なぜ器具を分けるのか。「ショルダープレス」で検索して出てくる上位記事は、実質的にマシンとダンベルの記事だからです。 調べた5記事のうち、バーベル版の手順を書いていたのは1件(4ステップの短文のみ)でした。ラックの高さの合わせ方、バーの軌道、立って行うか座って行うか、グリップ幅——このどれも上位記事にほとんど書かれていません。 そこをこの記事で埋めます。
もう1点、先に書いておきます。重量の目安として「男性15〜25kg」といった数値が流通していますが、それが片手のダンベルなのか、バーベルの総重量なのか、マシンのウェイトスタックなのか、どの記事も明示していません。 バーベルはシャフト単体で20kgあるため、単位が違えば意味がまるで変わります。この点は第5章で扱います。
1. ショルダープレスはどこに効くのか
主働筋は三角筋の前部と中部、そして上腕三頭筋です。
| 筋名 | 動作中の役割 |
| 三角筋前部・中部 | 腕を頭上へ運ぶ(肩関節の屈曲・外転) |
| 上腕三頭筋 | 肘を伸ばす |
| 僧帽筋上部・前鋸筋 | 腕を上げる動作に合わせて肩甲骨を動かす |
| 脊柱起立筋・腹直筋・腹横筋 | 立って行う場合、上体が反るのを止める |
1-1. 「三角筋全体に効く」とは書きません
上位記事のあいだで、三角筋後部を含めるかどうかが分かれています。 5記事のうち3記事は「前部・中部」と書き、1記事は「前部・中部・後部」と書いていました(1記事は該当ページに記載なし)。
当サイトは三角筋後部を主働筋として書きません。 理由は、肩の挙上における三角筋の役割を調べた研究で、後部三角筋は腕を横に上げる方向に対して機械的に不利だと報告されているためです。前部・中部の三角筋が挙上域の大部分で正の外転モーメントアーム(腕を横に上げる方向に働く力の腕)を持つのに対し、後部三角筋は内転モーメントアームを持つという内容です。
出典:Liu J, Hughes RE, Smutz WP, Niebur G, Nan-An K. Clinical Biomechanics, 12(1), 32–38, 1997年(PubMed PMID 11415669 )
この研究が測定したのは「腕を横に上げる(外転)」方向のモーメントアームであり、ショルダープレスのような頭上への押し上げ方向は測定対象ではありません。 したがって「ショルダープレスでは後部三角筋がまったく働かない」ことを示したものではありません。書けるのは「後部三角筋を主働筋として扱う根拠がない」という範囲までです。 三角筋後部を狙うならリアレイズのように動作の方向が合った種目のほうが目的に直結します。
ショルダープレス1種目で肩が完成するわけではありません。 三角筋中部はサイドレイズ、後部はリアレイズ、前部はフロントレイズで個別に狙えます。組み方は第8章で扱います。
2. バーベルショルダープレスのやり方

バーベルで行う形は「ミリタリープレス」「オーバーヘッドプレス」とも呼ばれます。 上位記事でほとんど書かれていない部分なので、手順を細かく置きます。
2-1. ラックの準備
- ラックのフックの高さを、鎖骨のあたりに合わせます。 バーを取り出すときに、しゃがまず・つま先立ちにならず届く高さです。高すぎると取り出しで肩が上に押し込まれ、低すぎるとスクワットの動作が加わります
- セーフティバーを設定します。 パワーラックの場合、押し上げに失敗したときにバーを受け止める位置に置きます。立って行う場合はセーフティが機能しないため、後述する「戻せる重量にとどめる」判断が代わりになります
- プレートを付けたらカラー(留め具)で固定します。 頭上でバーが傾くと、プレートが片側にずれます
当店(横須賀衣笠店・目黒店)ではパワーラックとスミスマシンでバーベル版を行えます(2026年8月時点)。ラックの操作手順はパワーラックの使い方、スミスマシンについてはスミスマシンの使い方にまとめています。
2-2. 手順
- グリップ幅: バーを順手で握ります。幅は肩幅より少し広めが出発点です。目安として、肘を90度に曲げたときに前腕が床に対して垂直になる幅です。広すぎると前腕が外へ倒れ、狭すぎると肘が体の前に入ります
- バーを取り出す: バーを鎖骨の前(前肩の上)に乗せた位置で構えます。肘はバーの真下より少し前です
- 足と体幹: 足は腰幅。膝は伸ばしたまま(反動を使わないため)。お腹に力を入れて、腰が反らないよう固めます
- 押し上げる: 息を吐きながら、バーを真上へ押し上げます。このとき顔をわずかに後ろへ引いて、バーが顔の前を通る道を作ります。 バーが顔に当たるのを避けようとして体を反らせると、腰に負荷が集中します
- 顔を通過したら頭を戻す: バーが額を過ぎたら、頭を元の位置へ戻します。押し上げ切った位置で、バーが耳の真上〜やや後ろに来るのが目安です
- 肘: 押し上げ切ったところで肘は伸ばしますが、関節をロックして体重を預けません
- 下ろす: 息を吸いながら、同じ軌道を逆にたどって鎖骨の前まで下ろします。落とすように戻さず、下ろす局面を自分でコントロールします
2-3. バーの軌道が最重要です
バーベル版でいちばん崩れるのは軌道です。 バーが顔の前を通るため、(a)顔を後ろに引いて道を作るか、(b)バーを前方に弧を描かせて避けるか、(c)上体を後ろに反らせて避けるかのいずれかになります。
このうち(b)と(c)は、狙いから外れやすい形です。(b)はバーが体から離れるほど肩関節にかかるモーメントアームが長くなり、(c)は上体を反らせるとインクラインプレスに近い角度になります。いずれも構造上の説明で、3つの軌道を直接比較した研究は当サイトでは確認できていません。
- (b)前方に弧を描く: バーが体の重心線から離れるため、肩の前側と手首に負荷が集中します
- (c)上体を反らせる: 押し上げる方向が「真上」から「斜め前上」に変わり、腰椎が反った状態で荷重を支えることになります。重量を上げたときに最初に出る崩れがこれです
鏡を横から見るか、動画を横から撮ると、この3つは一目で区別できます。
2-4. 立って行うか、座って行うか
| 立って行う(スタンディング) | 座って行う(シーテッド) | |
| 上体の固定 | 自分の体幹で固める | 背もたれで固定される |
| 反りやすさ | 反りやすい | 背もたれがあるぶん反りにくい |
| 反動 | 膝を使える(意図しない反動が入りやすい) | 膝を使えない |
| 失敗時 | バーを前に置くか、体を逃がす必要がある | ラックまたはセーフティに戻せる |
| 扱える重量 | – | – |
「扱える重量」の欄に記載を入れていないのは、立位と座位で1RMを比較した資料を当サイトでは確認できていないためです。
始めるなら座位からにしてください。 背もたれで上体が固定されるため、§2-3の(c)の崩れが構造的に起きにくくなります。立位に移るのは、座位で腰を反らせずに一定の回数をこなせるようになってからです。
2-5. フォームが崩れていないかの確認ポイント
| チェック項目 | 崩れているサイン |
| バーの軌道 | バーが前方に弧を描いている、または上体を反らせて避けている(最重要) |
| 腰 | 押し上げるときに腰が反る、みぞおちが前に出る |
| 前腕 | 前腕が床に対して垂直から外れ、肘が外へ流れている |
| 膝 | 立位で膝を使って反動をつけている |
| 下ろす深さ | 鎖骨の前まで下ろしていない(可動域が狭い) |
| 下ろす動作 | 下ろす局面が速い、脱力して落としている |
| 首 | 頭を戻すタイミングが遅く、あごが上がったまま押している |
セット最初の1回ではなく、最後の1〜2回で確認してください。
3. マシンショルダープレスのやり方
マシンは軌道がレールで決まっているため、決めるのは「体をマシンに合わせる位置」です。
3-1. 調整の手順
- シートの高さ: 握るグリップが肩の高さ〜わずかに上に来る位置に合わせます。低すぎると押し上げ始めから肩がすくみ、高すぎると可動域の下半分が使えません
- 背もたれに背中をつける: 腰・背中を背もたれに接触させます。隙間ができるなら、シートが低いか背もたれの角度が合っていません
- 足の位置: 両足の裏が床に着く位置。届かない場合はプレートなどで足場を作ります
- グリップ: 機種によって縦握り・横握りが選べます。横握り(手のひらが前)はバーベル版に近い前腕の向きになり、縦握り(手のひらが向かい合う)は肩の前側の引っかかりが出にくいという違いがあります
- ウェイト: ピンを差して選びます。刻みが大きい機種では、1段上げると負荷が大きく変わります
縦握りと横握りの筋活動を比較した資料は、当サイトでは確認できていません。 選ぶ基準は「肩の前側に引っかかりが出ないほう」です。
3-2. 動作
- 息を吐きながらグリップを押し上げます
- 押し上げ切ったところで肘をロックして体重を預けません
- 息を吸いながら、グリップが肩の高さに戻るまで下ろします
- 軌道はマシンが決めているため、意識するのは「下ろす深さ」と「速さ」の2点です
マシンは軌道が固定されているぶん、バーベル版で最重要だった軌道の崩れが起きません。 一方で、体をマシンに合わせる位置が間違っていると、そのまま固定された軌道で動かし続けることになります。 最初の調整に時間をかけてください。
バルクフィット24の2店舗には、ショルダープレス専用マシンを設置していません(2026年8月時点)。バーベル版をパワーラックまたはスミスマシンで、ダンベル版をダンベル(おおむね2〜30kg)で行えます。設置している器具はトレーニングマシンの種類一覧にまとめています。
4. スミスマシンで行う場合

スミスマシンはバーの軌道が固定されているため、バーベル版とマシン版の中間にあたります。
- 軌道が前後方向に固定されるため、§2-3の(b)「前方に弧を描く」崩れが起きません
- 一方で、顔の前を通る道は自分で作る必要があります(頭を後ろへ引く動作は同じです)
- 機種によってレールが垂直か斜めかが違います。 斜め軌道の機種では、押し上げる方向が真上ではなくなります
軌道が垂直か斜めかの確認方法はスミスマシンの記事にまとめています。 ショルダープレスは真上へ押し上げる種目なので、斜め軌道の機種では体の向きと立ち位置を調整する必要があります。
5. 重量の決め方
5-1. まず、流通している数値には単位がありません
上位記事の重量目安を並べます。
| 出所 | 示されている目安 |
| 解説記事A | 筋肥大:男性15〜25kg/女性5〜10kg。引き締め:男性15kg/女性5kg |
| 解説記事B | 初心者:男性10〜20kg/女性5〜10kg。1RMの70〜80%が標準 |
| 統合元(当サイト旧記事) | 初心者10回×3セット(重量の記載なし) |
問題は数値の食い違いではありません。単位が書かれていないことです。
- ダンベル片手の重量なのか
- ダンベル左右の合計なのか
- バーベルの総重量(シャフト込み)なのか
- マシンのウェイトスタックの表示値なのか
どの記事も明示していません。 オリンピックシャフトは単体で20kgあるため、「男性15〜25kg」がバーベルを指すならシャフト+プレート最大2.5kgという解釈になります。マシンのスタックを指すならまったく別の話です。単位が示されていない数値は、比較も適用もできません。
当サイトでは、体重や性別からショルダープレスの適正重量を割り出せる、学会や所管団体レベルの検証済みデータを確認できていません。 kgの早見表の読み方についてはダンベルショルダープレスの記事で、「何キロからすごい」「10kgはきついか」といった問いに沿って詳しく扱っています。
5-2. 器具ごとの起点
数値の早見表が使えないため、器具ごとに「起点」を決めて回数で測ります。
| 器具 | 起点 | 刻み |
| バーベル | シャフト単体。 オリンピックシャフトは20kg。短いバーや軽量バーがある施設ならそちらから | プレートの最小単位(片側1.25kgなら合計2.5kg刻み) |
| マシン | 最も軽いピン位置 | 機種のスタック刻み。刻みが大きい機種では、1段の変化が大きい |
| スミスマシン | バー単体。 機種によってバー重量が違うため、刻印または施設の掲示を確認 | プレートの最小単位 |
バーベル版でシャフト単体(20kg)が重い場合、それは「やってはいけない」という意味ではありません。 マシンかダンベルから始めて、押し上げる動作そのものに慣れてからバーベルに移る順序が現実的です。
5-3. 回数を先に決めて、重量を後から合わせます
8〜12回でギリギリ限界が来る重量から始めてください。
RM(Repetition Maximum)とは、フォームを保ったまま挙げられる限界の回数のことです。アメリカスポーツ医学会(ACSM)2009年版のポジションスタンドでは、経験レベル別に次の負荷が示されています。
| 経験レベル | 推奨される負荷 | 頻度 |
| Novice(初心者) | 8〜12RM | 週2〜3回 |
| Intermediate(中級者) | 1〜12RMを周期的に変化させる | 週3〜4回 |
| Advanced(上級者) | 1〜12RMを周期化し、1〜6RMを重視 | 週4〜5回 |
出典:American College of Sports Medicine「Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults」Med Sci Sports Exerc, 41(3), 687–708, 2009年(PubMed PMID 19204579 )
これはレジスタンストレーニング全般の原則で、ショルダープレス専用の基準ではありません。 頻度もトレーニング全体に対する推奨です。
ACSMは2026年に改訂版を公表しています。137件のシステマティックレビュー・3万人超のデータを統合したもので、筋肥大が目的なら筋群あたり週約10セットを確保し、下ろす(エキセントリック)局面を重視することが有効とされました。失敗まで追い込むこと・器具の種類・複雑な期分けは、成果に一貫した影響を与えなかったと結論づけられています。種目ごとのkg基準はここでも示されていません。
出典:American College of Sports Medicine「Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults: An Overview of Reviews」Med Sci Sports Exerc, 58(4), 2026年(PMC12965823の全文 )
この結論はマシンとフリーウェイトのような、レジスタンストレーニング器具どうしの分類レベルの話です。 対象は健康な成人です。「バーベルとマシンとダンベルのショルダープレスは互いに置き換え可能」と読むことはできません。 個別の種目の等価性を示したものではないためです。器具を選ぶうえで確認できるのは、§2〜§4で挙げた構造の違い(軌道が固定されるか、左右が連結されるか、失敗時に戻せるか)までです。
5-4. 実務上の組み方
- 回数: 8〜12回で限界が来る重量。バーの軌道が崩れるなら12〜15回側へ寄せます
- セット数: 2〜3セット。ACSM 2026年版の「週約10セット」はショルダープレス単体ではなく、三角筋を使う種目の合計で数えます
- 頻度: 週2〜3回
- 順序: 肩の日に入れる場合、多関節種目であるショルダープレスを先、レイズ系を後に置くのが一般的です。ただし種目の並び順を比較した研究は当サイトでは確認できていません
- セット間の休憩: ACSM 2009年版は目的別に、筋力3〜5分/筋肥大1〜2分/局所筋持久力90秒未満を示しています。系統的レビュー(23研究・計491名)では、鍛錬者が筋力向上を最大化するには2分超、未訓練者は60〜120秒で十分と思われるとされています。ただしこれは系統的レビューでありメタ解析ではありません。ショルダープレスを対象に休憩時間を比較した研究は当サイトでは確認できていません。
- ウォームアップ: バーベル版ではシャフト単体で1セット行ってからプレートを付ける手順が実務上採られています。ウォームアップの効果を比較した資料は当サイトでは確認できていません
6. ビハインドネック(頭の後ろに下ろす形)はどうか
当サイトは推奨も非推奨も示しません。判断材料を持っていないためです。
大手メーカーのトレーニング解説では7種目のうちの1つとして「ショルダープレス(ビハインドネック)」が挙げられていますが、可否の判断材料は示されていませんでした。 上位5記事のうち、この形に触れていたのはその1件のみです。
当サイトのデータベースには「ビハインドネック」を扱った研究がありますが、それはラットプルダウン(引く動作)の研究です。押し上げ動作には適用できません。 名称が似ているだけで、動作の方向が逆です。
書けるのは構造上の説明までです。バーを頭の後ろに下ろすには、肩を外旋させたまま外転させる肢位が必要になります。 この肢位の可動域には個人差があり、届かない場合は上体を前に倒して代償することになります。この形と傷害の関係を追跡した資料は確認できていません。
7. 肩に痛みが出る場合
肩の痛みの原因として頻度が高いものに、肩峰下インピンジメント症候群があります。学会誌の総説では、スポーツ活動における肩の痛みの原因の44〜65%を占めると報告されています。
出典:大庭有希也「肩峰下インピンジメント症候群の解剖学的考察とマネジメント」Strength and Conditioning Journal Japan 31巻4号、2024年(J-STAGE )
これはスポーツ活動全般の統計であり、ショルダープレス単体での発生率を示すものではありません。
種目単位の発生率について参考になる研究があります。ウェイトリフティング・パワーリフティング競技者(アマチュアから五輪エリートまで、15〜43歳)の肩傷害を扱った11研究のスコーピングレビューでは、肩傷害の発生率は7〜46%と研究間のばらつきが大きく、種目別の傷害発生率は報告されていませんでした。 リスク要因として挙げられたのは次のとおりです。
- 技術の不適切な実行
- 40歳以上という年齢
- 柔軟性不足
- オーバートレーニング
- 挙上中の肩の脆弱な肢位
- 不適切なウォームアップ
出典:Daher M, Jabre S, Casey JC, Fares MY, Boufadel P, Lopez R, Lawand J, Mansour J, Abboud JA.「Shouldering the load: A scoping review of incidence, types, and risk factors of shoulder injuries in weight-lifting athletes」Shoulder Elbow, 17(3), 254–263, 2025年(オンライン先行2024年)(PubMed PMID 39552690 )
対象は競技選手であって一般のトレーニーではないため、そのまま自分に当てはめることはできません。 そのうえで読み取れるのは、挙げられたリスク要因が種目名ではなく「技術・年齢・柔軟性・負荷管理・ウォームアップ」だという点です。 ショルダープレスという種目の可否ではなく、扱い方の側に手をかける余地があるということになります。
フォーム側で確認できるのは次の3点です。
| 確認する箇所 | 見直す内容 |
| バーの軌道 | 前方に弧を描いていないか、上体を反らせて避けていないか(§2-3) |
| 下ろす深さ | 肩の前側に引っかかりを感じる位置まで下ろしていないか |
| 重量 | 決めた回数を、腰を反らせずに完遂できているか |
肩の痛みや違和感が続く場合、あるいは動作中に鋭い痛みが出る場合は、フォームや重量の調整だけで無理に続けず、整形外科などの医療機関や専門家への確認が必要な場合があります。 肩の傷害の既往がある場合は、開始前に主治医へ確認してください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の症状に対する診断や治療方針を示すものではありません。 なお、肩峰下スペースの広さと痛みの関係は研究間で結果が一貫していません。この論点はアップライトロウの記事で出典付きに整理しています。
8. 他の肩種目との組み合わせ
肩の日に組む場合の例です。
- ショルダープレス(多関節・三角筋前部/中部+上腕三頭筋)
- サイドレイズ(三角筋中部)
- リアレイズ(三角筋後部)
- フロントレイズ(三角筋前部)
- アップライトロウ(三角筋前部/中部+僧帽筋)またはシュラッグ(僧帽筋上部)
ショルダープレスは上腕三頭筋も使います。 同じ日にディップスやプレス系の胸種目を高重量で入れると、上腕三頭筋の負荷が重複します。
§1-1のとおり、ショルダープレス1種目で三角筋の3方向をカバーすることはできません。 特に後部は動作の方向が合っていないため、リアレイズのような種目で個別に狙う必要があります。
器具ごとの組み立て方はジムの筋トレメニューは「器具」から決めるにまとめています。
9. よくある質問
- ショルダープレスはどこに効きますか?
-
三角筋の前部・中部と上腕三頭筋が主働筋です。肩甲骨を動かすため僧帽筋上部・前鋸筋も関与し、立って行う場合は体幹の筋が上体の反りを止めます。なお三角筋後部は主働筋として扱いません。腕を横に上げる方向に対して後部三角筋は機械的に不利だと報告されているためです(Liu et al., 1997)。ただしこの研究は押し上げ方向を測定したものではないため、「後部がまったく働かない」ことを示すものでもありません。
- バーベル・マシン・ダンベルのどれで始めるべきですか?
-
押し上げる動作そのものが初めてなら、軌道が固定されるマシンか、失敗時に戻しやすいマシンから始める形が扱いやすいはずです。バーベルは軌道を自分で作る必要があり、顔の前を通す動作の管理が加わります。ACSM 2026年版は「器具の種類は成果に一貫した影響を与えなかった」と結論していますが、これは器具分類レベルの結論であり、個別の種目が互いに置き換え可能であることを示すものではありません。
- 何kgから始めればいいですか?
-
kgではなく回数から決めてください。8〜12回で限界が来る重量が目安です。バーベルならシャフト単体(オリンピックシャフトは20kg)、マシンなら最も軽いピン位置が起点です。なお流通している「男性15〜25kg」といった数値は、片手のダンベルか総重量かマシンのスタックかが明示されておらず、そのままでは適用できません。
- バーが顔に当たりそうで怖いです。
-
顔をわずかに後ろへ引いて、バーが顔の前を通る道を作ってください。バーを前方に弧を描かせて避けると肩の前側と手首に負荷が集中し、上体を反らせて避けると腰椎が反った状態で荷重を支えることになります。この2つは重量を上げたときに最初に出る崩れです。
- 立って行うか、座って行うか、どちらがいいですか?
-
座位から始めてください。背もたれで上体が固定されるため、上体を反らせて押す崩れが構造的に起きにくくなります。立位に移るのは、座位で腰を反らせずに一定の回数をこなせるようになってからです。なお立位と座位で1RMを比較した資料は当サイトでは確認できていません。
- マシンのシートはどの高さに合わせますか?
-
握るグリップが肩の高さ〜わずかに上に来る位置です。低すぎると押し上げ始めから肩がすくみ、高すぎると可動域の下半分が使えません。あわせて、腰と背中が背もたれに接触しているかを確認してください。隙間ができるならシートが低いか背もたれの角度が合っていません。
- 何回・何セットやればいいですか?
-
8〜12回で限界が来る重量で2〜3セットが出発点です。ACSM 2009年版はNovice(初心者)に8〜12RM・週2〜3回を示しています(レジスタンストレーニング全般への推奨で、ショルダープレス専用の基準ではありません)。ACSM 2026年版の「筋群あたり週約10セット」は本種目単体ではなく、三角筋を使う種目の合計で数えます。
- セット間の休憩は何秒ですか?
-
ACSM 2009年版は目的別に、筋力3〜5分/筋肥大1〜2分/局所筋持久力90秒未満を示しています。系統的レビュー(23研究・計491名)では、鍛錬者が筋力向上を最大化するには2分超、未訓練者は60〜120秒で十分と思われるとされています。ただしこれは系統的レビューでありメタ解析ではありません。ショルダープレスを対象に休憩時間を比較した研究は当サイトでは確認できていません。
- ウォームアップは必要ですか?
-
バーベル版ではシャフト単体で1セット行ってからプレートを付ける手順が実務上採られています。ただしウォームアップの効果を比較した資料は当サイトでは確認できていません。なお競技者の肩傷害を扱ったスコーピングレビューでは、リスク要因の1つとして「不適切なウォームアップ」が挙げられています(Daher et al., 2025)。
- 頭の後ろに下ろす形(ビハインドネック)はどうですか?
-
当サイトは推奨も非推奨も示しません。判断材料を持っていないためです。当サイトのデータベースにある「ビハインドネック」の研究はラットプルダウン(引く動作)を対象としたもので、押し上げ動作には適用できません。構造上は、肩を外旋させたまま外転させる肢位が必要になり、可動域には個人差があります。
- どこまで下ろせばいいですか?
-
バーベルなら鎖骨の前(前肩の上)、マシンならグリップが肩の高さに戻るまでが目安です。ただし肩の前側に引っかかりを感じる位置まで下ろしていないかを確認してください。可動域の正解を数値で示した一次情報は当サイトでは確認できていません。
- 肩が痛くなります。
-
バーの軌道、下ろす深さ、重量の3点を確認してください。痛みや違和感が続く場合は、自己判断で継続せず医療機関への確認を検討してください。本記事は個別の症状に対する判断を示すものではありません。
- ショルダープレスだけで肩は大きくなりますか?
-
ショルダープレスは三角筋の前部・中部を主に使う種目で、後部は主働筋として扱いません。肩を3方向で組むなら、サイドレイズ(中部)・リアレイズ(後部)・フロントレイズ(前部)を組み合わせる形になります。
- スミスマシンでもできますか?
-
できます。バーの軌道が前後方向に固定されるため、前方に弧を描く崩れが起きません。ただし顔の前を通す道は自分で作る必要があり、機種によってレールが垂直か斜めかが違います。斜め軌道の機種では立ち位置の調整が必要です。
本記事で「上位記事」と書いている箇所は、2026年8月13日時点でGoogle検索(日本)の上位に表示されていた記事を指します。検索結果は日々変動するため、現在の表示順とは異なる場合があります。
10. まとめ
- バーベル版でいちばん崩れるのはバーの軌道です。 顔をわずかに後ろへ引いて道を作ります。前方に弧を描く、上体を反らせて避ける、のどちらかになっていたら重量が重い側です。横から鏡か動画で見れば一目で分かります。
- 始めるならマシンか座位のバーベルからです。 マシンは軌道が固定され、座位は背もたれで上体が固定されます。立位のバーベルは、軌道と体幹の固定を同時に管理する形になります。
- 流通している重量の目安には単位がありません。 「男性15〜25kg」が片手のダンベルなのか、バーベルの総重量なのか、マシンのスタックなのかが示されていません。器具ごとの起点(バーベル=シャフト単体20kg、マシン=最も軽いピン位置)から、8〜12回で限界が来る重量を測ってください。
- ショルダープレス1種目で肩は完成しません。 三角筋後部は腕を横に上げる方向に対して機械的に不利だと報告されており、主働筋として扱えません。リアレイズのように動作の方向が合った種目で個別に狙う必要があります。
