シーテッドローで語られる論点は、グリップの持ち方と肩甲骨の寄せ方に集中しています。この2つについて、測定した研究を確認しました。
肩甲骨を固定する条件と自由にする条件を高密度筋電図で比べた研究では、引く局面で差が出たのは後部三角筋だけでした。 広背筋、僧帽筋の上部・中部・下部、上腕二頭筋、脊柱起立筋はいずれも同等でした。
グリップについては、7条件を比較した研究(男性40名、経験5年以上)で、広背筋の活動に有意差がありませんでした。 著者は「グリップの有効性がこの筋を狙うという前提に疑問を投げかける」と結論しています。
そして書いておくべき点として、シーテッドローで背中が太くなるかを長期に追跡した研究を、当サイトでは1本も確認できませんでした。
1. シーテッドローで使う筋
座って、ケーブルまたはマシンのハンドルを体へ引き寄せる動作です。
この種目を対象に高密度表面筋電図で測定した研究では、次の筋が測定対象になっています。
| 測定された筋 |
| 広背筋 |
| 僧帽筋 上部・中部・下部 |
| 三角筋 中部・後部 |
| 上腕二頭筋 |
| 上腕三頭筋 |
| 脊柱起立筋 |
出典:Padovan R, et al. J Funct Morphol Kinesiol, 11(1):6, 2025年(PMID: 41562724、全文 )
「シーテッドローは菱形筋に効く」という説明を見かけますが、菱形筋を僧帽筋中部と分離して単独で測定した研究を、当サイトでは確認できていません。
今回参照した研究では、この領域はいずれも「僧帽筋中部」または「僧帽筋中部/菱形筋」として扱われており、菱形筋を分離した測定値は示されていません。
したがって「菱形筋に効く」と単独で断定できる一次情報を、当サイトでは確認できていません。
2. 肩甲骨は寄せるべきか
2-1. 高密度筋電図で比較した研究
レジスタンストレーニング経験2年以上の男性14名(25±4歳)を対象に、8RM負荷で、肩甲骨を固定する条件と自由にする条件を比較した研究があります。高密度表面筋電図(HD-sEMG)を使い、引く局面(短縮性)と戻す局面(伸張性)を分けて測定しています。
| 局面 | 差が出た筋 | 差が出なかった筋 |
| 引く(短縮性) | 後部三角筋のみ(+4.37%、95%CI 0.80〜7.94、効果量0.66) | 僧帽筋上部・中部・下部、広背筋、三角筋中部、上腕二頭筋、上腕三頭筋、脊柱起立筋(すべてp>0.05) |
| 戻す(伸張性) | 僧帽筋中部(+3.72%、0.71〜6.72、効果量0.67)、広背筋(+6.83%、2.47〜11.20、効果量0.85) | 僧帽筋上部・下部、三角筋中部・後部、上腕二頭筋、上腕三頭筋、脊柱起立筋 |
両条件の8RM重量は同等でした(自由49.9±6.1kg、固定50.3±5.7kg、p>0.05)。
著者の結論は次のとおりです。
肩甲骨を固定した条件と自由な条件は同等の全体的な筋活動パターンを生み、一部の上背部の筋において量的・空間的な差を示す
著者は、戻す局面で僧帽筋中部と広背筋の活動が高かった理由を「肩甲骨の拘束によって課される安定化の要求が増したことの結果と解釈できる」と説明しています。
著者が明記している限界:
- 「高密度筋電図は、筋力の産生や長期の形態的適応について直接推論することを許さない。したがって本知見は、トレーニングによる筋構造の変化ではなく、急性の神経筋要求を反映するものとして解釈すべきである」
- 負荷は8RM相当の単一条件のみ
- 電極グリッドは各筋の一部分しか覆っていない
- 体幹や骨盤の回旋を運動学的に測定していない
- サンプルサイズは同種の研究と同程度だが、一般化にはより大きなサンプルが必要
資金提供なし・利益相反なしと明記されています。
2-2. 別の研究では、逆方向の示唆が出ています
健常男性12名(27.09±1.23歳、ウェイトトレーニング経験6か月超)を対象に、等尺性10秒保持で比較した2004年の研究があります。
この研究の著者は「意識的に肩甲骨を寄せても、僧帽筋中部/菱形筋の活動は増えなかった」と記載しています。
出典:Lehman GJ, et al. Dyn Med, 3:4, 2004年(PMID: 15228624、全文 )
この研究は、抄録と本文で内容が食い違っています。
抄録は「僧帽筋中部/菱形筋の活動が最も高いのはシーテッドロー」と書いていますが、本文のResultsで統計的に有意だったのは「肩甲骨を寄せなかった条件」のみで、寄せた条件については「傾向はあったが統計的に有意ではなかった」と明記されています。
一方で平均値を見ると、寄せた条件のほうが高い(僧帽筋中部/菱形筋で35.50% vs 29.77%MVC)という、統計的に整合しない報告になっています。
また著者は「活動水準が30〜40%MVCと低く、速筋線維(Type II)が動員されていない可能性がある」「高い活動水準で同じ関係が成り立つかは不明」を限界に挙げています。
2-3. 現時点で言えること
2つの研究の条件が大きく違います。
| 2025年の研究 | 2004年の研究 | |
| 負荷 | 8RM(動的) | 30〜40%MVC(等尺性10秒保持) |
| 測定法 | 高密度表面筋電図 | 表面筋電図 |
| 対象 | 経験2年以上の男性14名 | 経験6か月超の男性12名 |
「肩甲骨を寄せる意識」の効果について、研究間で結果が一致していません。 当サイトとしては、どちらか一方を根拠に「寄せるべき」「寄せる必要はない」と断定することはしません。
言える範囲は次のとおりです。
- 8RM負荷では、引く局面で差が出たのは後部三角筋のみでした
- 戻す局面では、肩甲骨を固定したほうが僧帽筋中部と広背筋の活動が高くなりました
- どちらも急性の測定であり、長期的に太くなるかを示したものではありません
3. グリップで効き方は変わるのか
3-1. 7条件を比較した研究では、広背筋に差がありませんでした
レジスタンストレーニング経験5年以上・週3回以上の男性40名(23.88±3.56歳)を対象に、1RMの70%で7条件を比較した研究があります。
| 筋 | 条件間の有意差 |
| 広背筋 | なし(p=0.868) |
| 僧帽筋中部 | なし(p=0.484) |
| 僧帽筋下部 | なし(p=0.298) |
| 上腕二頭筋 | なし(p=0.414) |
| 棘下筋 | なし(p=0.807) |
| 後部三角筋 | あり(順手ワイド+体幹30度後傾が、順手ワイド p=0.011・中立ワイド p=0.017 より高い) |
著者の結論は次のとおりです。
グリップの変化は広背筋の動員を有意に変えない可能性があり、グリップの有効性がこの筋を狙うという前提に疑問を投げかける
出典:Buonsenso A, et al. J Funct Morphol Kinesiol, 10(3):345, 2025年(PMID: 40981044、全文 )
この研究の対象はラットプルダウンで、シーテッドローではありません。 ただしサンプル数が40名と大きく、対象が経験5年以上の層である点で、参照する価値があります。
著者は「活動水準が60%MVCを下回ることが多く、Type II線維に関わる高閾値運動単位が動員されていない可能性」を限界に挙げています。資金提供なし・利益相反なしと明記されています。
3-2. グリップ幅についても、差がなかったという報告があります
男性15名を対象に、ナロー(肩峰間距離の1倍)/ミディアム(1.5倍)/ワイド(2倍)を6RMで比較した研究があります。
- 6RM重量はナロー80.3±7.2kg・ミディアム80±7.1kgがワイド77.3±6.3kgより高い(p=0.02)
- 広背筋・僧帽筋・棘下筋の筋電図活動は、グリップ幅間で同等
著者の結論は「肩峰間距離の1〜2倍の範囲であれば、同等の筋活動、ひいては同等の筋肥大が期待できる」というものです。
出典:Andersen V, et al. J Strength Cond Res, 28(4), 1135-1142, 2014年(PMID: 24662157。当サイトでは抄録のみ確認)
3-3. ただし、逆の結果を報告した研究もあります
健常男性12名を対象にした研究では、順手(回内)グリップが逆手(回外)より広背筋の活動が大きかった(p<0.05)と報告されています。グリップ幅は影響しなかったとされています。
出典:Lusk SJ, et al. J Strength Cond Res, 24(7), 1895-1900, 2010年(PMID: 20543740。当サイトでは抄録のみ確認)
グリップと広背筋の活動について、報告が分かれています。
| 結論 | 研究 | 規模・対象 |
| 差なし | Buonsenso 2025 | n=40、経験5年以上 |
| 差なし | Andersen 2014 | n=15 |
| 差なし | Lehman 2004 | n=12、経験6か月超 |
| 差あり(順手>逆手) | Lusk 2010 | n=12 |
より新しく、サンプルが大きく、対象の経験年数が長い研究が「差なし」側にあります。 ただしこれは研究の数で決まる問題ではないため、当サイトとしては「グリップで効き方が変わる」と断定することはしません。 なおこの4件のうち、シーテッドローの条件を含むのはLehman 2004のみで、同研究がグリップとして比較しているのはプルダウン側の2条件です。
なお2004年の研究の著者は「ワイドグリップが背中を、クローズグリップ逆手が上腕二頭筋を優先的に鍛えるという、多くの臨床家・パーソナルトレーナーの主張は支持されない」と記載しています。
3-4. シーテッドローでのグリップ研究は確認できませんでした
3-1から3-3で挙げた研究のうち、Buonsenso 2025・Andersen 2014・Lusk 2010の3件はラットプルダウンを対象としたものです。 Lehman 2004はシーテッドローの条件を含みますが、比較しているのは肩甲骨の寄せ方であって、グリップの幅や向きではありません。
シーテッドローでグリップ幅・順手逆手・中立グリップを比較した研究を、当サイトでは確認できていません。 またシーテッドローで体幹の前傾・後傾角度を操作した研究も確認できていません。
上位記事にグリップや体幹角度による効き分けの指示があった場合も、根拠が示されているかを確認してください。
4. 重量をどう決めるか

4-1. 上位記事の数値が逆転しています
2026年8月14日に取得できた上位7記事のうち、重量に言及していたものの数値です。
| 記載されている数値 | 想定されている層 |
| 成人男性20kg | 一般 |
| 未経験23kg | 未経験者 |
「成人男性の目安」が「未経験者の目安」を下回っています。 数値の逆転が起きている状態です。どちらにも出典が示されていません。
当サイトでは、シーテッドローの適正重量を体重や性別から算出する根拠を確認できていません。 よって数値を書きません。
4-2. 回数から決めます
アメリカスポーツ医学会(ACSM)2009年版のポジションスタンドは、経験レベル別に次を示しています。
| 経験レベル | 負荷 | 頻度 |
| Novice(未訓練、または数年間トレーニングしていない) | 8〜12RM | 週2〜3日 |
| Intermediate(継続的な経験が約6か月) | 1〜12RMを周期化(筋肥大は6〜12RM域を重視) | 週3〜4日 |
| Advanced(数年の経験) | 1〜12RMを周期化(同上) | 週4〜5日 |
負荷の漸増は「目標回数より1〜2回多くできるようになったら、負荷を2〜10%増やす」という基準です。
出典:American College of Sports Medicine. Med Sci Sports Exerc, 41(3), 687-708, 2009年(PMID: 19204579、PubMed )
この頻度はトレーニング全体に対する推奨であり、シーテッドローという種目を週に何回行うかを示したものではありません。 またこの種目を対象に負荷や回数を比較した研究は、当サイトでは確認できていません。
ウェイトスタック式のマシンは刻みが決まっているため、2〜10%をそのまま適用できない場合があります。 その場合は1段階上げたあとに回数が目標域へ収まるかを見てください。
4-3. 重すぎるときに出るもの
- 上体が大きく後ろへ倒れ、体を振って引いている
- 腰が丸まる、または反る
- ハンドルが体に届かない(可動域が浅くなる)
- 戻す局面が速く、重りが落ちる音がする
これらは実務上「重すぎる」と判断される目安であり、重量とこれらの現象の関係を測定した資料を当サイトでは確認できていません。
5. この種目で背中は太くなるのか
シーテッドローの長期的な筋肥大を検証した研究を、当サイトでは1本も確認できませんでした。
5-1. 近い研究はありますが、そのまま使えません
健常男子大学生18名(24.9±5.3歳、2年以上レジスタンストレーニングを継続していない実質未経験者)を8週間追跡した研究があります。プログラムにはベンチプレス、ラットプルダウン、シーテッドロー、ショルダープレス、ハンマーカール、ダンベル外旋が含まれています。
結果として、広背筋の単一筋線維の断面積が有意に増加しました(生検により第5肋骨の高さの広背筋外側縁から採取)。
出典:Paoli A, et al. Nutrients, 8(6):331, 2016年(PMCID: PMC4924172、PMC4924172の全文 )
(1)抄録の「whole muscle CSA」は広背筋ではありません。 論文の本文を読むと、MRIで測定されたのは利き腕(上肢)の筋断面積(45.13±3.3 → 47.94±4.4 cm²)です。論文タイトルに “Latissimus Dorsi” が入っているため、抄録だけを読むと「広背筋の断面積がMRIで増えた」と誤読する構造になっています。
広背筋について測定されたのは、生検による単一筋線維の断面積のみです。
(2)これはタンパク質補給の研究であり、種目を比較した研究ではありません。 シーテッドローとラットプルダウンとプレス系が同時に含まれるプログラムなので、シーテッドロー単独の寄与は分離できません。
(3)対象は実質未経験者の男性18名です。
利益相反なしと明記、資金はイタリア宇宙機関(ASI)です。
5-2. 比較試験はまだ結果が出ていません
ラットプルダウンとローイングの筋肥大を比較する試験が登録されています(ブリティッシュコロンビア大学、MRIで筋体積を測定、10週間、20名予定)。
ただし2026年8月14日時点で、この試験は募集開始前であり、結果は登録されていません。
出典:ClinicalTrials.gov NCT07360236
つまり「ラットプルダウンとシーテッドローのどちらが背中を太くするか」に答えられる一次情報を、当サイトでは確認できていません。
6. ラットプルダウンとの使い分け
シーテッドローとラットプルダウン、およびその他のローイング系を、同一のプロトコルで比較した研究を、当サイトでは確認できていません。 参照できるのは次の3つに分かれた研究です。
| 研究 | 比較した種目 | 測定した筋 |
| Lehman 2004(PMID: 15228624) | プルダウン2条件+シーテッドロー2条件 | 広背筋、上腕二頭筋、僧帽筋中部/菱形筋 |
| Fenwick 2009(PMID: 19620925。当サイトでは抄録のみ確認) | インバーテッドロー、立位ベントオーバーロー、立位片手ケーブルロー | 体幹・股関節の筋、腰椎荷重 |
| Franke 2015(PMID: 24947920。当サイトでは抄録のみ確認) | インクラインプルダウン、シーテッドロー、リバースペックデック | 三角筋の前部・中部・後部のみ |
「どれが一番広背筋に効くか」を1本の研究で答えたものはありません。
Lehman 2004の平均値では、シーテッドローのほうがプルダウンより広背筋・僧帽筋中部/菱形筋の値が高くなっていました。ただし前述のとおり、この研究には統計的な不整合があります。
ラットプルダウン、ベントオーバーローの記事もあわせて参照してください。
6-1. 腰への負担について
ローイング系3種を比較した研究では、次が報告されています。
- インバーテッドロー(斜め懸垂):広背筋・上背部・股関節伸展筋の活動が最大で、腰部脊柱起立筋の活動と腰椎荷重は最低
- 立位ベントオーバーロー:背部全体に左右対称の大きな活動。ただし腰椎荷重は最大
- 立位片手ケーブルロー:体幹の回旋能力を要求
著者は「腰を保護したい者は、脊椎荷重が最も低いインバーテッドローを選ぶことができる」と記載しています。
出典:Fenwick CMJ, Brown SHM, McGill SM. J Strength Cond Res, 23(5), 1408-1417, 2009年(PMID: 19620925。当サイトでは抄録のみ確認、n=7)
比較された種目は、インバーテッドロー・立位ベントオーバーロー・立位片手ケーブルローの3つです。座位のシーテッドローは含まれていません。
したがって「シーテッドローは腰への負担が少ない」の根拠として、この研究を使うことはできません。
なお上位記事のあいだでも、シーテッドローと腰の関係について「問題ない」と「痛める原因になる」という逆の評価が並んでいました(2026年8月14日時点)。当サイトでは、シーテッドローと腰部負荷の関係を測定した資料を確認できていません。
7. セットアップと動作

7-1. マシンの合わせ方
- シートに座り、足をプレートに置きます
- 膝を軽く曲げます(伸ばし切らない形が実務上採られています)
- ハンドルを持ち、上体を起こします
これらは器具の構造に沿った手順であり、比較検証した研究を当サイトでは確認できていません。 機種固有の操作については、取扱説明書または施設の掲示を優先してください。
7-2. 動作
| 局面 | 動き |
| 引く | 息を吐きながらハンドルを体へ引き寄せます |
| 戻す | 息を吸いながら戻します。重りを落とさない速さが目安になります |
呼吸のタイミングと戻す速さは、いずれも実務上広く採られている手順であり、これらを比較検証した研究を当サイトでは確認できていません。
なお前掲の2025年の研究では、戻す局面で肩甲骨を固定したほうが僧帽筋中部と広背筋の活動が高くなっていました。 戻す局面を意識する根拠としては、この結果が参照できます。ただし急性の測定です。
7-3. 上位記事のあいだで指示が逆になっている点
2026年8月14日時点で、次の点について上位記事の指示が分かれていました。
| 論点 | 分かれ方 |
| 脇の締め方 | 「脇を締める」(2件)vs「脇を軽く開く」(1件) |
| グリップと効く筋の割り当て | 2件のあいだで逆になっている |
| 腰への影響 | 「問題ない」vs「痛める原因」 |
これらについて、当サイトでは判断できる資料を確認できていません。
8. セット間の休憩
ACSM 2009年版は目的別に、筋力3〜5分/筋肥大1〜2分/局所筋持久力90秒未満を示しています。系統的レビュー(23研究・計491名)では、鍛錬者が筋力向上を最大化するには2分超、未訓練者は60〜120秒で十分と思われるとされています。ただしこれは系統的レビューでありメタ解析ではありません。
出典:Grgic J, et al. Sports Med, 48(1), 137-151, 2018年(PMID: 28933024)
シーテッドローを対象に休憩時間を比較した研究は当サイトでは確認できていません。
本記事で「上位記事」と書いている箇所は、2026年8月14日時点でGoogle検索(日本)の上位に表示されていた記事を指します。検索結果は日々変動するため、現在の表示順とは異なる場合があります。
9. よくある質問
- 肩甲骨は寄せたほうがいいですか?
-
8RM負荷で比較した研究では、引く局面で差が出たのは後部三角筋のみで、広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋・脊柱起立筋はいずれも同等でした。戻す局面では、肩甲骨を固定したほうが僧帽筋中部と広背筋の活動が高くなりました(Padovan 2025)。一方、等尺性・低負荷で行った別の研究では「意識的に寄せても僧帽筋中部/菱形筋の活動は増えなかった」とされています(Lehman 2004)。条件が違うため、研究間で結果が一致していません(2章)。
- グリップは順手と逆手のどちらがいいですか?
-
7条件を比較した研究(男性40名、経験5年以上)では、広背筋の活動に有意差がありませんでした(p=0.868)。グリップ幅についても差がなかったという報告があります。一方、順手が逆手より広背筋の活動が大きかったとする研究もあり、結果が食い違っています(3章)。なおこれらはいずれもラットプルダウンの研究で、シーテッドローでのグリップ研究は確認できていません。
- 菱形筋に効きますか?
-
菱形筋を僧帽筋中部と分離して単独で測定した研究を、当サイトでは確認できていません。 今回参照した研究では、この領域はいずれも「僧帽筋中部」または「僧帽筋中部/菱形筋」として扱われています。
- 重量は何キロから始めればいいですか?
-
当サイトでは、体重や性別から適正重量を算出する根拠を確認できていません。 上位記事のあいだでは「成人男性20kg」が「未経験23kg」を下回るという逆転が起きており、どちらにも出典がありません。8〜12回で限界が来る重量を軽い側から探してください(4章)。
- シーテッドローで背中は太くなりますか?
-
シーテッドローの長期的な筋肥大を検証した研究を、当サイトでは1本も確認できませんでした。 近い研究はありますが、タンパク質補給の研究で複数種目を含むプログラムのため、シーテッドロー単独の寄与を分離できません。またその研究でMRIで測定されたのは上肢の断面積であり広背筋ではありません(5章)。
- ラットプルダウンとどちらをやるべきですか?
-
3種目を同一プロトコルで比較した研究を確認できていません。 「どれが一番広背筋に効くか」に1本の研究で答えたものはありません。ラットプルダウンとローイングの筋肥大を比較する試験は登録されていますが、2026年8月14日時点で募集開始前です(6章)。
- 腰に負担はかかりませんか?
-
シーテッドローと腰部負荷の関係を測定した資料を、当サイトでは確認できていません。 ローイング系3種を比較した研究はありますが、その研究に座位のシーテッドローは含まれていません(インバーテッドロー・立位ベントオーバーロー・立位片手ケーブルローの3種)。なお上位記事のあいだでも「問題ない」と「痛める原因」で評価が逆でした。痛みや違和感がある場合は中断し、医療機関への確認が必要な場合があります。
- 上体は倒したほうがいいですか?
-
シーテッドローで体幹の前傾・後傾角度を操作した研究を、当サイトでは確認できていません。 ラットプルダウンで体幹30度後傾を条件に含めた研究では、測定された6筋のうち後部三角筋のみに差が出ており、広背筋・僧帽筋中部・僧帽筋下部・上腕二頭筋・棘下筋には有意差がありませんでした(Buonsenso 2025)。
- 週に何回やっていいですか?
-
この種目を対象に頻度を比較した研究は当サイトでは確認できていません。 ACSM 2009年版はNovice(初心者)に週2〜3日を示していますが、これはトレーニング全体に対する推奨で、種目ごとの上限ではありません。
- 効いている感じがしません。
-
「効いている感じ」と筋の発達の関係を示す資料を、当サイトでは確認できていません。 なお未経験者を対象とした研究では、言語による指示だけで広背筋の筋電図が有意に上がったという報告があります(n=8・未経験女性・最大の30%負荷)。ただし著者は「他の協働筋の活動を意識的に減らして筋群を『分離』できることを意味するものではない」と結論しています(Snyder BJ, Leech JR. J Strength Cond Res, 23(8), 2204-2209, 2009年、PMID: 19826307。当サイトでは抄録のみ確認)。
10. まとめ
- 肩甲骨を寄せるかどうかで、引く局面に差が出たのは後部三角筋だけでした。 戻す局面では固定したほうが僧帽筋中部(+3.72%)と広背筋(+6.83%)の活動が高くなりました。いずれも急性の測定です。
- グリップを変えても広背筋の活動は変わらなかったという報告が3件あります(うち1件は男性40名・経験5年以上)。逆の結果を報告した研究もありますが、いずれもラットプルダウンの研究で、シーテッドローでの検証は確認できていません。
- 菱形筋を単独で測定した研究は確認できていません。 参照したどの研究も「僧帽筋中部」または「僧帽筋中部/菱形筋」として扱っています。
- 重量は上位記事のあいだで数値の逆転が起きており、どちらにも出典が示されていません。
- シーテッドローの長期的な筋肥大研究は1本も確認できませんでした。 比較試験は登録されていますが募集開始前です。
情報を読むときの視点として1点。この種目では「グリップで効き分ける」「肩甲骨を寄せる」という指示が定番になっていますが、グリップについては複数の研究が差を認めておらず、しかもその検証はシーテッドローではなくラットプルダウンで行われています。 指示を見たら、それがどの種目で、何を測った結果なのかを確認する価値があります。
