フロントレイズは必要? 三角筋前部の役割から見る取り入れ方と重量の決め方

フロントレイズは、肩のメニューに必ず入れなければならない種目ではありません。三角筋前部は、腕を横に上げる方向にも力を出せる位置にあると報告されており、前部だけを担当する単独種目が必須である、とまでは当サイトの材料では言えないためです。

一方で、腕を前方へ上げる動作を狙って作れるのはこの種目です。前部を意図的に足したいときの選択肢として意味があります。

この記事では、「フロントレイズは必要なのか」という判断材料を出典付きで示したうえで、フォームの手順、重量を数字ではなく手順で決める方法、そして検索でよく挙がる「初心者は何キロか」「胸に効くのか」に正面から答えます。

目次

1. フロントレイズは必要ですか?

肩の挙上における三角筋の役割を調べた研究では、前部・中部の三角筋が挙上域の大部分で正の外転モーメントアーム(腕を横に上げる方向に働く力の腕)を持つと報告されています。三角筋前部は、前方へ上げる動作の専門家ではなく、横に上げる動作にも力を出せる位置にあるということです。

出典:Liu J, Hughes RE, Smutz WP, Niebur G, Nan-An K.「Roles of deltoid and rotator cuff muscles in shoulder elevation」Clinical Biomechanics, 12(1), 32–38, 1997年(PubMed PMID 11415669

ここから言えることと、言えないことを分けます。

言えること言えないこと
三角筋前部は、腕を横に上げる方向にも正のモーメントアームを持つ位置にある「サイドレイズをやっていればフロントレイズは不要」という置き換えの可否。この研究は種目の効果を比較したものではありません
したがって「前部は前方に上げる種目でしか使われない」という前提は成り立たない押し上げ方向(ショルダープレスなどのプレス系)については、この研究の測定対象外です。プレス系で前部を代替できるかどうかは、この出典からは判断できません

筋活動の測定では、ラテラルレイズと同じではありません

一方で、フロントレイズとラテラルレイズ4条件(外旋位・中立位・内旋位・肩関節屈曲位)を同じ被験者・同じ手順で比較した筋電図研究があります。男性の競技ボディビルダー10名(トレーニング歴10.6±1.8年)が座位で、種目ごとに8RMの負荷を個別に決めて6反復し、各筋の活動をその筋の最大等尺性活動で正規化して比較したものです。フロントレイズは上腕を中間位(親指を向かい合わせ)で90度まで前方屈曲する条件でした。

測定した筋報告されている結果
三角筋 前部押し上げる局面(求心相)ではフロントレイズが最も高い(ラテラルレイズ外旋位比 効果量1.78/中立位比5.30/内旋位比6.72/屈曲位比1.95)。ただし下ろす局面(遠心相)では外旋位・中立位のラテラルレイズがフロントレイズより高い
三角筋 中部・後部、上部僧帽筋押し上げる局面ではいずれもフロントレイズが最も低い

出典:Coratella G, Tornatore G, Longo S, Esposito F, Cè E.「An Electromyographic Analysis of Lateral Raise Variations and Frontal Raise in Competitive Bodybuilders」International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(17), 6015, 2020年, PMID: 32824894(全文

つまり、押し上げる局面に限れば、三角筋前部の活動はラテラルレイズで置き換えられていません。 同時に、フロントレイズは中部・後部・僧帽筋の関与が最も小さい種目でもあります。前部に絞りたいときに向く種目だと言えます。

この研究から言えない範囲

報告されているのは効果量と信頼区間のみで、比較ごとのp値は示されていません。 被験者は競技ボディビルダー10名であり、一般のトレーニーに当てはまるかは推定になります。加えて1回のセッションでの筋活動の測定であり、筋肥大を測ったものではありません。 「フロントレイズを入れると三角筋前部が大きくなる」ことを示した研究ではない点に注意してください。

そのうえで、この種目を入れる判断は次のように整理できます。

  • 入れる理由になるもの: 押し上げる局面の三角筋前部の活動を最も高くできる種目である。腕を前方へ上げる動作を狙って単独で作りたい。三角筋前部が明らかに弱点だと感じている。
  • 入れなくてもよい場合: すでにサイドレイズダンベルショルダープレスで肩の量が十分に確保できており、これ以上肩の総セット数を増やしたくない。

なお、「フロントレイズを省略すると三角筋前部が発達しない」という因果を示したトレーニング研究は、当サイトでは確認できていません。必須か不要かを断定できる材料はないというのが現時点の状況です。

2. フロントレイズで鍛えられる筋肉(「胸に効く」のはなぜか)

主働筋は三角筋前部です。腕を体の前方へ上げる動き(肩関節の屈曲)を担当します。

加えて、大胸筋の鎖骨部(大胸筋の上側の線維)も肩関節の屈曲に関わる筋です。ダンベルを前方へ上げる動作では、鎖骨のすぐ下あたりに張りを感じることがあります。

この「胸に効く」という感覚には、筋活動の測定の裏づけがあります。第1節で引用した研究は大胸筋鎖骨部も測定していて、フロントレイズはラテラルレイズの全4条件より、大胸筋鎖骨部の活動が突出して高いと報告されています。押し上げる局面の効果量は21.31〜34.21、下ろす局面でも11.01〜12.46という水準です。

出典:Coratella G, Tornatore G, Longo S, Esposito F, Cè E.「An Electromyographic Analysis of Lateral Raise Variations and Frontal Raise in Competitive Bodybuilders」International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(17), 6015, 2020年, PMID: 32824894(全文

「胸に効く」から「胸を鍛えられる」には飛べません

上の測定は筋の電気的な活動を比較したものです。筋肥大は測定されていません。 したがって「フロントレイズは大胸筋を鍛える種目として成立する」という結論には使えません。言えるのは、フロントレイズの動作中に大胸筋鎖骨部が強く働いているという範囲までです。胸を狙って鍛えたい場合は、目的に合った種目を別に組むほうが確実です。なお同研究は効果量のみでp値の記載がなく、被験者は競技ボディビルダー10名です。

そのほか、動作中に関与する筋として次のものが挙げられます。

筋名この種目での位置づけ
三角筋前部主働筋。肩関節の屈曲。押し上げる局面の活動はラテラルレイズ4条件より高い
大胸筋鎖骨部肩関節の屈曲を共有する。ラテラルレイズ4条件より活動が突出して高い
上部僧帽筋・前鋸筋肩甲骨の動きに関わる。挙上に伴って働く(上部僧帽筋の活動はラテラルレイズより低い)
脊柱起立筋・腹直筋上体が前後に振れないよう等尺性に働く

三角筋は前部・中部・後部で担当する動きが分かれています。中部はサイドレイズ、後部はリアレイズが受け持つ方向です。

3. フロントレイズの正しいフォームとやり方

以下は、ダンベルを立位で持つ基本形の手順です。

  1. スタートポジション: 足を腰幅に開き、両手にダンベルを持ちます。膝を軽く緩め、胸を張り、肩を下げた位置を作ります。ダンベルは太ももの前に置きます。
  2. 上げる: 肘を軽く曲げたまま、ダンベルを前方へ上げていきます。上体は動かしません。
  3. トップポジション: 腕が床と平行になるあたり(肩の高さ)で止めます。
  4. 戻す: 下ろす局面を自分でコントロールします。太ももに当たる直前で止め、力を抜かずに次の1回へつなげます。
  5. 繰り返す: 決めた回数まで、上体の角度を変えずに行います。

フォームが崩れていないかの確認ポイント

重量を上げると、次の順番で崩れが出ます。1つでも当てはまる場合は、その重量が今の自分に対して重い可能性があります。

チェック項目崩れているサイン
上体上げる瞬間に体が後ろへ反る、または前後に振れる
挙上と同時に肩がすくみ、耳に近づく
スタート時より肘が深く曲がり、ダンベルが体に近づく
膝の曲げ伸ばしで下から突き上げている
下ろす動作下ろす局面が速く、太ももに当てて止めている
左右差片側だけ先に上がる、または上がりきらない

フォームは回数を重ねるほど崩れます。セット最初の1回ではなく、最後の1〜2回でこの表を確認してください。立位のフロントレイズは上体の反りが自分では見えにくいため、可能であればスマートフォンを真横に置いて撮影すると気づきやすくなります。

上げる高さと手の向き

  • 高さ: 腕が床と平行になるあたり(肩の高さ)で止める形が基本です。ここから先へ上げると、肩甲骨の動きが加わって動作の中身が変わります。フロントレイズを対象に挙上範囲を比較した測定データは当サイトでは確認できていませんが、参考として、アップライトローを扱った臨床総説では、通常の肩の挙上動作は肩峰下インピンジメントを避けるために上腕の外旋を伴うと述べられています。肩の高さを大きく超えて内旋位のまま上げ続ける動作は、この記述の想定から外れます。

出典:Schoenfeld B, Kolber MJ, Haimes JE. Strength and Conditioning Journal, 33(5), 25–28, 2011年(DOI )※アップライトローを対象とした総説であり、フロントレイズを測定した研究ではありません。

  • 手の向き: 手のひらを下に向ける(回内位)、親指を上に向ける(中立位)のどちらの解説も流通しています。フロントレイズで手の向きを比較した測定データは当サイトでは確認できていません。 両方を試して、三角筋前部に張りを感じられるほうを選んで構いません。

4. フロントレイズの重量の決め方(「初心者は何キロ?」への答え)

先に結論から書きます。サイドレイズで使っている重量と同じか、それより1段階軽いところから試し、決めた回数をフォームを保って完遂できるかで判断します。

4-1. 「初心者は◯kg」という信頼できる基準は確認できていません

体重・性別・経験レベルからフロントレイズの適正重量を割り出せる、学会や所管団体レベルのデータは、2026年8月時点で確認できていません。解説記事の中には「体重に係数を掛ける」計算式や「初心者は6〜8kg」といった数字を載せているものもありますが、その母集団や集計方法、実測かどうかが示されていません。 本記事では根拠を確認できない数値は掲載しない方針です。

なお、後述するACSMの2026年版ポジションスタンドでも、種目固有のkg基準は示されていません。

4-2. 回数を先に決めて、重量を後から合わせます

RM(Repetition Maximum)とは、フォームを保ったまま挙げられる限界の回数です。12回で限界が来る重量を「12RM」と表現します。

アメリカスポーツ医学会(ACSM)の2009年版ポジションスタンドでは、経験レベル別に次の負荷が示されています。

スクロールできます
経験レベル原典での定義推奨される負荷頻度
Novice(初心者)レジスタンストレーニングの経験がない、または数年間トレーニングしていない8〜12RM週2〜3回
Intermediate(中級者)継続的なレジスタンストレーニング経験が約6か月1〜12RMを周期的に変化させる週3〜4回
Advanced(上級者)数年のレジスタンストレーニング経験がある1〜12RMを周期化し、1〜6RMを重視週4〜5回

出典:American College of Sports Medicine「Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults」Med Sci Sports Exerc, 41(3), 687–708, 2009年(PubMed PMID 19204579

この表の読み方

上表はACSM 2009年版の記載です(負荷量の現行版は後述の2026年版)。Intermediateの「約6か月」は原文が “approximately 6 months” であり、厳密な閾値ではありません。 また負荷・頻度はレジスタンストレーニング全般に対する原則で、フロントレイズ専用の基準ではありません。頻度もトレーニング全体に対する推奨で、フロントレイズ単体の実施回数を指すものではありません。原典自身が「これらの推奨は文脈のなかで適用され、個人の目標・身体能力・トレーニング状態に依存する」と明記しています。

フロントレイズは単関節種目で、上体を固定したまま行います。低回数・高重量に寄せるほど反りや反動が出やすいため、比較的高回数側で扱われることが多いというのが実務上の傾向です。ただしこれは上掲のACSM 2009年版の原則から導いた一般的な考え方であり、フロントレイズという種目を対象にした回数指定の研究ではありません。

4-3. 最初の1本の選び方(3ステップ)

  1. 回数を先に決めます。 経験が浅い段階では、12回前後で限界が来る重量を目標にします。
  2. サイドレイズと同じか1段階軽い重量から試します。 1セット行い、3. 正しいフォームとやり方のチェック表に当てはまる崩れが出ないかを確認します。
  3. 崩れが出なかったときだけ刻んで上げます。 12回を終えても上体が反らず、肩がすくまずに完遂できた場合のみ、次回に1段階上げます。反りや反動が出るようであれば1段階戻します。

この手順を踏むと、適正重量は「他人の数値」ではなく「自分で測定した結果」として出てきます。

5. 回数・セット数・頻度

ACSMは2026年3月に、2009年版から17年ぶりとなる改訂版を公表しています。137件のシステマティックレビューと3万人超のデータを統合したもので、目的別に次のとおり整理されています。

目的負荷・量
筋力向上週2セッション以上、80%1RM、1種目あたり2〜3セット
筋肥大筋群あたり週約10セット、下ろす局面(エキセントリック)を重視
パワー向上30〜70%1RM

出典:American College of Sports Medicine「Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults: An Overview of Reviews」Med Sci Sports Exerc, 58(4), 2026年(PMC12965823の全文

  • 筋肥大の「週約10セット」は筋群単位で示された値です。フロントレイズ単体で数えるのではなく、三角筋前部を使う種目の合計で数えます。プレス系を行っている場合、その分も含めて肩の総量を見てください。
  • 失敗まで追い込むこと、器具の種類、複雑な期分けは、成果に一貫した影響を与えなかったと結論づけられています。ダンベルかバーベルかケーブルかという器具の選択は、この結論の範囲では優劣の判断材料になりません。これは器具分類レベルの結論であり、個別種目が互いに置き換え可能であることを示すものではありません。対象は健康な成人です。

6. 上位記事が答えていない実務的な疑問

セット間の休憩は何分ですか?

前掲のACSM 2009年版は、目的別に筋力(Intermediate〜Advanced)3〜5分/筋肥大1〜2分/パワー3〜5分/局所筋持久力(40〜60%1RMで15回超)90秒未満を示しています。

これを補強する系統的レビューが2件あります。筋力については、23研究・計491名を対象としたレビューが「短い休憩(60秒未満)でも頑健な筋力向上は達成しうるが、鍛錬者が筋力向上を最大化するにはより長い休憩(2分超)が必要と思われ、未訓練者は60〜120秒で十分と思われる」と結論しています。筋肥大については、6研究を対象としたレビューが「短い休憩も長い休憩もいずれも有用でありうる」としたうえで、鍛錬者を対象とした新しい知見は長い休憩が有利な可能性を示唆すると述べています。

出典:Grgic J, Schoenfeld BJ, Skrepnik M, Davies TB, Mikulic P. Sports Medicine, 48(1), 137–151, 2018年(PubMed PMID 28933024 )/Grgic J, Lazinica B, Mikulic P, Krieger JW, Schoenfeld BJ. European Journal of Sport Science, 17(8), 983–993, 2017年(PubMed PMID 28641044

この2件はメタ解析ではありません

上の2件はいずれも系統的レビューで、効果量を統計的に統合したメタ解析ではありません。筋肥大側は採択研究が6件のみです。またフロントレイズのような単関節種目を対象に休憩時間を比較した研究は、当サイトでは確認できていません。 実務上は、次のセットで同じ回数を同じフォームで反復できるまで待つ、という判断が現実的です。

肩のトレーニングの何番目に置きますか?

ACSM 2009年版は、運動強度の保持を最適化するよう大筋群→小筋群、多関節→単関節、高強度→低強度の順に配列することを推奨しています。フロントレイズは単関節種目なので、この原則ではショルダープレスなどの多関節種目のあとに置く並びになります。

ただしこれは推奨の提示であり、順序を入れ替えて成果を比較した介入研究のメタ解析ではありません。 三角筋前部が明らかに弱点だと感じる場合、疲労の少ない前半に持ってくる選択肢もあります。なお「単関節種目で先に疲労させると、続く多関節種目でその筋がより働く」という考え方(事前疲労)については、ベンチプレスを対象とした実験(n=8)で、大胸筋・三角筋前部の活動には有意差が出ず、有意に増えたのは上腕三頭筋だけという結果が報告されています。三角筋前部を狙う目的では、先に単関節種目を置く根拠になりません。

出典:Gołaś A, Maszczyk A, Pietraszewski P, Stastny P, Tufano JJ, Zając A. Journal of Strength and Conditioning Research, 31(7), 1919–1924, 2017年(PubMed PMID 27984499 )※ベンチプレスを対象とした研究であり、ショルダープレスではありません。

ウォームアップは必要ですか?

フロントレイズ単体でウォームアップの有無を比較した研究は確認できていません。関連する情報として、競技ウェイトリフター・パワーリフターの肩傷害を対象としたスコーピングレビューでは、リスク要因の一つに不適切なウォームアップが、また挙上中の肩の脆弱な肢位が挙げられています。ただし対象は競技選手であり、種目別の指示ではありません。

出典:Daher M, et al.「Shouldering the load: A scoping review of incidence, types, and risk factors of shoulder injuries in weight-lifting athletes」Shoulder Elbow, 17(3), 254–263, 2025年(オンライン先行2024年)(PubMed PMID 39552690

週に何回まで/連日やっていいですか?

前掲のACSM 2009年版が示す頻度はトレーニング全体に対する推奨で、肩を毎回追い込むという意味ではありません。連日実施の可否を種目単位で検証したデータは当サイトでは確認できていません。

ダンベルがないときはどうしますか?

水を入れたペットボトルで代用できます(500mlで約0.5kg)。自宅では細かい重量刻みを用意しにくいため、重量を上げる代わりに回数を増やす、下ろす局面をゆっくりにするといった調整が現実的な場合があります。

7. 肩に痛みが出る場合

肩の痛みの原因として頻度が高いものに、肩峰下インピンジメント症候群があります。学会誌の総説では、スポーツ活動における肩の痛みの原因の44〜65%を占め、オーバーヘッド動作を伴う競技で多く発生すると報告されています。この数字はスポーツ活動全般における統計であり、フロントレイズ単体での発生率を示すものではありません。

出典:大庭有希也「肩峰下インピンジメント症候群の解剖学的考察とマネジメント」Strength and Conditioning Journal Japan 31巻4号、2024年(J-STAGE

「手のひらを下に向けて上げると肩峰下のスペースが狭まって痛みが出る」という説明を見かけることがありますが、この因果関係は単純ではありません。

  • 肩峰下腔の広さ(肩峰と上腕骨頭の距離、AHD)と肩峰下痛の有無を比較した系統的レビュー・メタ解析(15研究・775名)では、安静位・45度外転・60度外転のいずれでもAHDに有意差は認められませんでした(Park SW, et al. Scientific Reports, 10, 20611, 2020年、PMC7693267の全文 )。
  • さらに、90度挙上位での上腕の回旋がAHDに与える影響については、研究間で結果が一貫していません。 ある研究では外旋でAHDが増加、別の研究では減少、また別の研究では有意差なしという3通りの結果が併存していると報告されています(Lawrence RL, Braman JP, Ludewig PM. Braz J Phys Ther, 24(3), 219–230, 2020年、PMC7253874の全文 )。

つまり、手の向きひとつで「痛める・痛めない」が決まるという単純化はできません。 単一の研究を根拠に、あるフォームが安全だ/危険だと断定することも避けるべき状況です。

フォーム側で確認できるのは、次の3点です。

確認する箇所見直す内容
挙上の高さ肩の高さを大きく超えて上げ続けていないか
重量決めた回数を、上体を反らせずに完遂できているか
下ろす動作脱力して落としていないか

痛みや違和感が続く場合は、自己判断でトレーニングを継続せず、整形外科などの医療機関や専門家への確認が必要な場合があります。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の症状に対する診断や治療方針を示すものではありません。

8. フロントレイズのバリエーション

バリエーション構造上の違い
ダンベルフロントレイズ(両手同時)基本形。左右同時に上げるため上体が反りやすくなります
オルタネイトフロントレイズ(片手交互)片側ずつ上げます。左右差がそのまま見えます
シーテッドフロントレイズベンチに座って行います。膝で突き上げる余地がなくなります
インクラインフロントレイズ傾斜をつけたベンチに背中を預けます。上体の反りを台が止めます
バーベル/EZバーフロントレイズ両手の間隔が固定されます。手首の角度も固定されます
ケーブルフロントレイズアタッチメントと滑車の高さで引く方向を変えられます
プレートフロントレイズプレートの縁を両手で持ちます。ダンベルより保持位置が体から遠くなります

バリエーションを変えたら重量も測り直します。 立位で6kgが適正でも、シーテッドやインクラインでは上体の反りが使えなくなるぶん扱える重量が変わります。

なお、前掲のACSM 2026年版では器具の種類が成果に一貫した影響を与えなかったとされていますが、これは器具分類レベルの結論であり、上の各バリエーションが互いに置き換え可能であることを示すものではありません。

9. 他の肩トレーニングとの組み合わせ

三角筋は前部・中部・後部で担当する動きが異なります。

第1節で見たとおり、三角筋前部は腕を横に上げる方向にも力を出せる位置にあります。そのため、サイドレイズやプレス系をすでに行っている場合、フロントレイズを足すと肩の総量が想定より増えている可能性があります。 肩全体のセット数を数えたうえで判断してください。

あわせて、フロントレイズは三角筋中部・後部・上部僧帽筋の関与が最も小さい種目でもあります(第1節の測定)。前部だけを足したいときには合う一方、この種目だけで肩全体を賄うことはできません。肩を含むメニュー全体の組み方はジムの筋トレメニューで扱っています。

10. フロントレイズに関するよくある質問(FAQ)

フロントレイズとはどういう意味ですか?

腕を体の前方(front)へ上げる(raise)動作の種目です。ダンベルやバーベル、ケーブルなどを前方へ上げ、三角筋前部を主働筋として使います。

フロントレイズで鍛えられる筋肉は?

主働筋は三角筋前部です。肩関節の屈曲を共有する大胸筋鎖骨部も関与します。動作中は肩甲骨に関わる上部僧帽筋・前鋸筋、上体を保つ脊柱起立筋・腹直筋も働きます。

フロントレイズは初心者は何キロですか?

体重や性別から適正重量を割り出せる信頼できるデータは、2026年8月時点で確認できていません。サイドレイズで使っている重量と同じか1段階軽いところから試し、12回前後で限界が来るかを見て決めてください。数字を先に決めるのではなく、回数を先に決める順番になります。

フロントレイズは胸に効くのですか?

筋活動の測定では、フロントレイズはラテラルレイズの全4条件より大胸筋鎖骨部の活動が突出して高いと報告されています(Coratella et al., 2020、効果量11.01〜34.21)。「胸に張りを感じる」という感覚には裏づけがあります。ただしこれは筋の電気的な活動の測定で、筋肥大は測られていません。 「胸を鍛える種目として成立する」とまでは言えないため、胸を狙う場合は目的に合った種目を別に組むほうが確実です(2. 鍛えられる筋肉参照)。

フロントレイズは必要ないですか?

三角筋前部は腕を横に上げる方向にも正のモーメントアームを持つ位置にあると報告されており(Liu et al., 1997)、前部だけの単独種目が必須であるとは断定できません。一方で筋活動の測定では、押し上げる局面の三角筋前部の活動はフロントレイズがラテラルレイズ4条件より高いと報告されています(Coratella et al., 2020)。省略すると発達しないという因果を示した研究は確認できていないため、前方へ上げる動作を狙って作りたいかどうかで判断してください。

サイドレイズをやっていればフロントレイズは省略できますか?

押し上げる局面に限れば、三角筋前部の活動はラテラルレイズで置き換えられていません(Coratella et al., 2020)。ただし下ろす局面では外旋位・中立位のラテラルレイズのほうが三角筋前部の活動が高いとも報告されており、局面によって向きが逆になります。加えて筋肥大を比較した研究ではないため、「置き換えられない」と断定することもできません。

ショルダープレスをやっていればフロントレイズは省略できますか?

この問いに答えられる材料を当サイトでは持っていません。 第1節で引用した研究は腕を横に上げる方向についての測定であり、押し上げ方向は対象外です。押し上げ動作で三角筋前部がどの程度使われるかを比較したデータが確認できていないため、置き換えの可否は判断できません。

セット間の休憩は何分取ればいいですか?

ACSM 2009年版は目的別に筋力3〜5分/筋肥大1〜2分/局所筋持久力90秒未満を示しています。系統的レビューでは、鍛錬者が筋力向上を最大化するには2分超が必要と思われ、未訓練者は60〜120秒で十分と思われると結論されています(Grgic et al., 2018)。ただしフロントレイズのような単関節種目を対象に比較した研究はありません。 次のセットで同じ回数を同じフォームで反復できるまで待つ、という判断が現実的です。

自宅でもできますか?

できます。ダンベルがなければ水を入れたペットボトルで代用できます(500mlで約0.5kg)。上体が反りやすい種目なので、壁に背中とお尻を軽く触れさせた状態で行うと、反りに気づきやすくなります。

11. まとめ

フロントレイズは、入れるかどうかを判断してよい種目です。三角筋前部は腕を横に上げる方向にも力を出せる位置にあると報告されており、前部専用の単独種目が必須だと断定できる材料はありません。

一方で筋活動の測定では、押し上げる局面の三角筋前部の活動はラテラルレイズ4条件より高く、大胸筋鎖骨部の活動も突出して高いと報告されています。「サイドレイズで代わりになる」とも言い切れないのが実情です。ただしいずれも筋肥大を測った研究ではありません。

そのうえで実践する場合、押さえる点は3つです。

  1. 重量はサイドレイズと同じか1段階軽いところから測ります。 12回前後で限界が来る範囲を探し、上体が反ったら1段階戻します。
  2. 肩の高さで止めます。 そこから先へ上げ続けると、動作の中身が変わります。
  3. 肩の総セット数を先に数えます。 前部はプレス系やサイドレイズでも関与しうるため、フロントレイズを足す前に肩全体の量を確認してください。
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