ディップスの回数とセット数について、先に答えを置きます。8〜12回で限界が来る負荷を2〜3セット。 回数はアメリカスポーツ医学会(ACSM)2009年版が初心者向けに示していた範囲、セット数は2026年版が筋力向上に示した「1種目あたり2〜3セット」に沿った設定です(2026年版は経験レベル別の回数域を示していません)。
ただしディップスには、バーベル種目と決定的に違う点があります。負荷が自分の体重で決まっているため、「8〜12回で限界が来る重量を選ぶ」という手順が使えません。 そこで実際にやることは次のどちらかになります。
- 12回以上できてしまう場合 → 加重して回数を戻す
- 8回できない場合 → 足を床につける・バンドを使うなどして負荷を下げる
そしてもう1点。限界まで追い込むことは、筋力・筋肥大のために必要とは示されていません。 これはメタ解析の結論です。「オールアウトさせろ」という指示をよく見かけますが、根拠としては弱い部分です。
この記事では回数・セット数・頻度・休憩時間・加重への移行を、根拠のある範囲とない範囲を分けて整理します。種類(バリエーション)とディップスができないときの代替種目はディップスの種類と代わりになる種目の記事にまとめています。
1. ディップスは何回・何セットやればいい?——効果が出る回数の目安
1-1. 回数とセット数の出発点
アメリカスポーツ医学会(ACSM)の2009年版ポジションスタンドでは、経験レベル別に次の負荷が示されています。RM(Repetition Maximum)とは、フォームを保ったまま行える限界の回数です。
| 経験レベル | 推奨される負荷 | 頻度 |
| Novice(初心者) | 8〜12RM | 週2〜3回 |
| Intermediate(中級者) | 1〜12RMを周期的に変化させる | 週3〜4回 |
| Advanced(上級者) | 1〜12RMを周期化し、1〜6RMを重視 | 週4〜5回 |
出典:American College of Sports Medicine「Progression Models in Resistance Training for Healthy Adults」Med Sci Sports Exerc, 41(3), 687–708, 2009年(PubMed PMID 19204579 )
ACSMは2026年に17年ぶりの改訂版を出しています。137件のシステマティックレビュー・3万人超のデータを統合したもので、筋力向上には週2セッション以上・80%1RM・1種目あたり2〜3セット、筋肥大には筋群あたり週約10セットとエキセントリック局面(下ろす局面)の重視が挙げられました。失敗まで追い込むこと・器具の種類・複雑な期分けは、成果に一貫した影響を与えなかったと結論づけられています。
出典:American College of Sports Medicine「Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults: An Overview of Reviews」Med Sci Sports Exerc, 58(4), 2026年(PMC12965823の全文 )
どちらもレジスタンストレーニング全般の原則であり、ディップス専用の基準ではありません。 ディップスを対象に回数を比較した研究は、当サイトでは確認できていません。
1-2. 自重種目では「回数を決めて重量を合わせる」ができません
ここがディップスの扱いにくい点です。バーベル種目なら「8〜12回で限界が来る重量」を選べますが、ディップスの負荷は自分の体重で決まっています。 選べるのは負荷ではなく、負荷を調整する方法です。
| 現在できる回数 | やること |
| 3回未満 | 負荷を下げます(足を床につける/バンドを使う/アシストマシン)。方法は種類の記事を参照してください |
| 3〜7回 | そのまま自重で行い、セット数を確保するほうに寄せます |
| 8〜12回 | 自重のままで範囲に入っています |
| 13回以上 | 加重を検討します(4章) |
「3回未満」「13回以上」という区切りは、上のACSM 2009年版の8〜12RMという範囲から逆算した運用上の目安であり、この区切り自体を検証した研究はありません。
1-3. セット数を増やすほど伸びるのか
週あたりのセット数と筋量の関係を調べたメタ回帰では、週のセット数が多いほど筋量の増加が大きいという関係が確認されています(P=0.002。1セット増加あたり増加率+0.37%に相当)。
ただし注意点があります。「週5未満/5〜9/10以上」の3段階で比較した分析は有意に達していません(P=0.074)。どこまで増やせば増えなくなるか(上限)は特定されていません。
出典:Schoenfeld BJ, Ogborn D, Krieger JW.「Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass: A systematic review and meta-analysis」J Sports Sci, 35(11), 1073–1082, 2017年(PubMed PMID 27433992 )
ACSM 2026年版の「筋群あたり週約10セット」も、ディップス単体ではなく、大胸筋や上腕三頭筋を使う種目の合計で数えます。 ベンチプレスやプッシュダウンを同じ週に行っているなら、その分を含めて計算してください。
1-4. 何回できたら「すごい」のか、何回が「普通」なのか
「初心者の平均は何回」といった数値表を掲載している記事がありますが、当サイトではこの種の数値を採用していません。 出所を確認すると、利用者の投稿を集計したクラウドソース型のデータベースか、1970年に刊行された一般書でした。集計方法や母集団が公開されておらず、比較の基準として使えません。
「何回できたらすごいか」も同じ理由で、回数の数字だけでは判定できません。 同じ10回でも、肘を伸ばし切る手前で止めているのか、肩の高さまで下げているのかで負荷が違います(6章)。判定するなら「決めた深さで、反動なしに、前回より回数か加重が増えているか」で見ます。
自分の回数が標準かどうかを気にする必要は、実務的にはありません。 前回より1回増えているか、同じ回数をより深い可動域でできているかのほうが、直接的な指標になります。
2. 限界まで追い込む必要はあるのか
上位の解説記事では「オールアウトさせる」「限界まで下げる」という指示をよく見かけます。この指示は、現時点の研究では支持されていません。
限界まで追い込むかどうかを比較した15研究のメタ解析では、次の結果が出ています。
- 筋力: 効果量 −0.09(95%信頼区間 −0.22〜0.05)=有意差なし
- 筋肥大: 効果量 0.22(95%信頼区間 −0.11〜0.55)=有意差なし
上2つの横棒は0の線をまたいでいます。 追い込んだ側と追い込まなかった側で、筋力・筋肥大とも差があるとは言えないという意味です。
著者の結論は「筋力と筋サイズの向上に、筋の限界まで行うことは必要とは思われない」というものです。
出典:Grgic J, Schoenfeld BJ, Orazem J, Sabol F.「Effects of resistance training performed to repetition failure or non-failure on muscular strength and hypertrophy: A systematic review and meta-analysis」J Sport Health Sci, 11(2), 202–211, 2022年(PMC9068575の全文 )
ただし「追い込みが無意味」と読むのも行き過ぎです。同じ解析の中で、鍛錬者に限ると筋肥大では追い込んだ側がわずかに優位(効果量0.15、95%信頼区間0.03〜0.26)という結果も出ています。
別のメタ解析(15研究)では、広い意味での「セット失敗」は筋肥大にわずかな優位を示す一方(効果量0.19、p=0.045)、厳密に動作が完遂できなくなる時点まで行った条件では有意差がありませんでした(効果量0.12、p=0.343)。著者は追い込みと筋肥大の関係が非線形である可能性を指摘しています。
出典:Refalo MC, Helms ER, Trexler ET, Hamilton DL, Fyfe JJ.「Influence of Resistance Training Proximity-to-Failure on Skeletal Muscle Hypertrophy: A Systematic Review with Meta-analysis」Sports Med, 53(3), 649–665, 2023年(PMC9935748の全文 )
では何回残せばよいのか。 ここは決まっていません。余力の回数(RIR:repetitions in reserve)と成果の関係を推定したメタ回帰のシリーズでは、筋力の向上は広い余力の範囲で同等、筋肥大では限界に近づくほど有利という傾向が示されましたが、著者自身が探索的な手法であり解釈を控えるよう明記しています(RIRは元の論文から推定した値で、実測ではありません)。
出典:Robinson ZP, Pelland JC, Remmert JF, Refalo MC, Jukic I, Steele J, Zourdos MC.「Exploring the Dose-Response Relationship Between Estimated Resistance Training Proximity to Failure, Strength Gain, and Muscle Hypertrophy: A Series of Meta-Regressions」Sports Med, 54(9), 2209–2231, 2024年(PubMed PMID 38970765 )
ディップスで追い込むときに起きること
限界まで1セット行ったときに何が変わるかを、ディップスで直接測った研究があります。健常男性15名(平均29.07歳、トレーニング歴3.79±5.23年)がバーディップスを限界まで行い、動作の2〜4回目と最後の3回を比較したものです。
| 測定項目 | 非疲労時 | 疲労時 | 有意差 |
| 1回あたりの所要時間 | 1.35±0.32秒 | 2.24±0.66秒 | p<0.001 |
| 関節角度のピーク値 | — | — | 有意差なし(p=0.314〜0.917) |
| 大胸筋・上腕三頭筋のピーク活動 | — | 増加 | p<0.001 |
| 三角筋前部のピーク活動 | — | ほぼ同等 | p=0.088〜0.699 |
出典:McKenzie A, Crowley-McHattan Z, Meir R, Whitting J, Volschenk W.「Fatigue Increases Muscle Activations but Does Not Change Maximal Joint Angles during the Bar Dip」Int J Environ Res Public Health, 19(21), 14390, 2022年(PMC9659300の全文 )
読み取れるのは、疲れてくると動作が明確に遅くなる(1.35秒→2.24秒)一方、可動域は浅くならなかったということです。動作が遅くなったことを疲労のサインとして使えます。
この研究の制約: 男性15名・ディップスの経験者・加重なしの1セットのみです。加重した場合や初心者で同じ結果になるとは限りません。また測定されたのは関節角度のピーク値のみで、動作の質全体を評価したものではありません。
実務上の設定
- 自重で8〜12回できる場合: 1〜2回の余力を残して終える設定で構いません
- 動作が明らかに遅くなったら、そのセットを終えます
- 一人でトレーニングしていて自力で上がれなくなるリスクがある場合、追い込む形は選ばないほうが安全です。 上のメタ解析のとおり、余力を残しても得られる成果の差は小さいと読める材料があります
3. セット間の休憩は何分?

上位の解説記事でセット間の休憩時間に触れているのは1件だけで、出典はありませんでした。当サイトで確認できた最も規模の大きい整理は次の系統的レビューです。
23研究・計491名(男性413名・女性78名)を対象に、短い休憩(60秒未満)でも筋力は向上するが、訓練経験者が筋力向上を最大化するには2分を超える休憩が必要と考えられると結論しています。未訓練者では60〜120秒で十分とされています。
出典:Grgic J, Schoenfeld BJ, Skrepnik M, Davies TB, Mikulic P.「Effects of Rest Interval Duration in Resistance Training on Measures of Muscular Strength: A Systematic Review」Sports Med, 48(1), 137–151, 2018年(PubMed PMID 28933024 )
これは系統的レビューであってメタ解析ではありません(定量的な統合は行われていません)。また女性は491名中78名で、女性への一般化は弱いという制約があります。
筋肥大についての同じグループの系統的レビューでは、60秒以下でも60秒超でもどちらも有用で、明確な差別化には追加研究が必要と結論されています(Grgic J, Lazinica B, Mikulic P, Krieger JW, Schoenfeld BJ. Eur J Sport Sci, 17(8), 983–993, 2017年、PubMed PMID 28641044 )。
ディップスを対象に休憩時間を比較した研究は、当サイトでは確認できていません。 上の範囲(初心者なら60〜120秒、筋力を狙う経験者なら2分以上)を出発点として、次のセットで狙った回数ができるかどうかで調整してください。
4. 加重に移るタイミングと重量

4-1. 移行の判断は回数で行います
自重で13回以上できるようになったら、加重を検討する段階です。 これは1章の「8〜12RM」という範囲から外れたことを意味します。
加重の手段はディッピングベルト(腰のベルトにプレートを吊るもの)、ウェイトベスト、リュックにプレートを入れる方法などです。
4-2. 何kgから加重するかは、確認できていません
加重自体重トレーニングの負荷設定を検証した一次研究は、当サイトでは確認できていません。 「体重の何%から」「まず5kgから」といった数値を支持する査読済みの研究は見つかりませんでした。上位の解説記事5件も、加重の手段は挙げるものの具体的な重量は1件も示していません。
近い領域の研究として、プッシュアップの難易度を段階的に上げていく4週間の無作為化比較試験があります(中程度に鍛えた男性23名、23±6.8歳。プッシュアップ漸進群14名 vs ベンチプレス群9名)。両群で1RMが有意に向上し(p<0.001)、筋厚には群内で有意差がありませんでした(p>0.05)。
出典:Kotarsky CJ, Christensen BK, Miller JS, Hackney KJ.「Effect of Progressive Calisthenic Push-up Training on Muscle Strength and Thickness」J Strength Cond Res, 32(3), 651–659, 2018年(PubMed PMID 29466268 )
この研究は外部の加重を使っていません。 種目そのものを難しくする形での漸進であり、加重の重量設定の根拠にはなりません。また4週間という短期間で人数も群間で不均衡です。
4-3. 実務的な進め方
数値の根拠がない領域なので、加重も回数を基準に運用します。
- 自重で13回以上できるようになったら、加重して8〜12回の範囲に戻します
- その重量で12回できるようになったら、また負荷を足します
- 加重の刻みは、使えるプレートの最小単位に合わせます
加重時に回数を落としすぎないでください。 ディップスは肩関節が伸展位(腕が体より後ろ)に入る種目で、加重して回数を落とすと、その肢位で扱う負荷が大きくなります。上位記事でも「重すぎるウェイトを設定すると肩や肘をケガする恐れがある」という注意が示されています。ただしこの点を実験的に検証した研究は当サイトでは確認できていません。
5. 週に何回できる? 毎日やっていい?
ACSM 2009年版では初心者は週2〜3回、2026年版では筋力向上に週2セッション以上が示されています(前掲)。いずれもトレーニング全体に対する推奨で、ディップス専用の基準ではありません。
「毎日やってよいか」については、必要な回復日数を示す一次情報を当サイトでは確認できていません。 上位記事でも「毎日はおすすめできない」と結論だけを書いたものが1件あり、根拠は示されていませんでした。
実務的には、同じ種目を連日行うと2日目の回数が落ちるかどうかを自分で確認するのが確実です。回数が明確に落ちるなら間隔を空ける、という判断になります。
6. どこまで深く下げる?——上位記事が正反対のことを言っている論点

解説記事を横に並べると、指示が食い違っています。
| 主張 | 出どころ |
| 肘が90度より深く曲がるまで下げる | 上位記事の一部 |
| 肘の角度は90度までにとどめる(それ以上は肩関節に過度なストレス) | 上位記事の別の一部 |
下降の深さを実験的に変えて、筋活動や肩の負荷を比較した研究は、当サイトでは確認できていません。 どちらかを正解と断定できる材料がありません。
参考になるのは、器具の違いによる肩の可動域を測った研究です。男性13名(平均29.92歳、トレーニング歴4.16±5.56年)がベンチディップス・バーディップス・リングディップスを行い、肩関節伸展のピーク角度を各自の最大可動域に対する割合で測定したものです。
| 種目 | 肩関節伸展のピーク(各自の最大可動域に対する%) |
| ベンチディップス | 101.35±6.49% |
| バーディップス(平行棒) | 88.03±10.20% |
| リングディップス | 68.88±13.88% |
出典:McKenzie A, Crowley-McHattan Z, Meir R, Whitting J, Volschenk W.「Bench, Bar, and Ring Dips: Do Kinematics and Muscle Activity Differ?」Int J Environ Res Public Health, 19(20), 13211, 2022年(PMC9603242の全文 )
ベンチディップスでは、肩関節が各自の最大可動域を超える位置まで動いていました。 著者はこれについて「肩関節前方の関節包に対するリスクを高める可能性がある」と述べ、「ベンチディップスは通常のストレングストレーニングやリハビリのプロトコルに含めるべきではない」と結論しています。
この結論の性質を正しく扱う必要があります。 著者の主張は可動域の測定からの機序的な推論であり、この研究は実際に傷害が起きた人数を追跡していません。因果関係は検証されていません。対象は男性13名・ディップスの習熟者です。
実務的な扱いをまとめます。
- 深さは、肩に違和感が出ない範囲で、毎回同じところまで下げてください。 深さが回ごとに変わると、回数が増えたのか可動域が浅くなったのか判別できません
- ベンチディップス(椅子や台に手をついて行う形)は、平行棒より肩が深い位置まで動きます。 負荷が軽い形として紹介されることが多いのですが、肩の位置という点では負担が小さいとは言えません
- 肩に痛みや違和感がある場合、深さを追う前に種目そのものを見直してください。 代替の選択肢は種類の記事にまとめています
肩の痛みや違和感が続く場合は、自己判断でトレーニングを継続せず、整形外科などの医療機関や専門家への確認が必要な場合があります。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の症状に対する診断や治療方針を示すものではありません。
7. ディップスはどこに効く?——「前傾すると大胸筋、直立だと上腕三頭筋」は本当か
上位記事5件すべてがこの説明をしています(角度の数値を示した記事は1件もありません)。
ディップスで体幹の前傾角度を変えて筋活動を比較した研究は、当サイトでは確認できていません。 ベンチプレスのベンチ角度を比較した研究は複数ありますが、ディップスは自分の体重を支える動作(閉鎖運動連鎖)で肩の伸展を伴うため、ベンチプレスの角度の話を当てはめることはできません。
前掲の器具比較の研究では、大胸筋鎖骨部・三角筋前部・上腕三頭筋外側頭など9筋の活動が測定されていますが、筋電位が正規化されていない生の値(mV)で報告されているため、筋と筋の大小比較(大胸筋と上腕三頭筋のどちらがよく働くか)はできません。 同じ筋を種目間で比べることにしか使えない数値です。
したがって「前傾させると胸に効く」という説明は、根拠を確認できないまま広く流通している状態です。 前傾姿勢そのものを否定するものではありませんが、「前傾すれば胸に効く」という前提で回数やセット数を設計しないほうが安全です。
8. 器具による違い——回数が変わります
同じ「ディップス」でも、器具によって筋活動が違います。前掲の研究では、ベンチディップスを基準にすると次の結果でした。
- バーディップス(平行棒)は、ベンチディップスに対し6筋でピーク活動が有意に大きい(大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋・上部僧帽筋・前鋸筋・広背筋。p<0.001〜0.008)
- リングディップスは、ベンチディップスに対し8筋で有意に大きい(上記+下棘筋・上腕二頭筋。p<0.001〜0.026)
- 上腕三頭筋外側頭のピーク値:ベンチ0.83±0.34 mV/バー1.04±0.27 mV/リング1.05±0.40 mV
出典:McKenzie A, et al. Int J Environ Res Public Health, 19(20), 13211, 2022年(PMC9603242の全文 )
器具を変えたら回数を測り直してください。 ベンチディップスで15回できても、平行棒で同じ回数はできません。
一方、ACSM 2026年版は器具の種類が成果に一貫した影響を与えなかったと結論しています(前掲)。「リングでなければ意味がない」という選び方をする必要はありません。実施できる器具で頻度を確保するほうが現実的です。
横須賀衣笠店・目黒店では、パワーラックで実施できる自重種目としてディップスを掲載しています(2026年8月時点)。器具ごとに実施できる種目の一覧はジムの筋トレメニューのページにまとめています。
9. メニューの中でどこに置くか
自重種目なので、プレートの付け替えや順番待ちが発生しません。 混雑している時間帯に差し込みやすい種目です。
胸の日に組む場合、フラットベンチプレスなどの多関節種目の後に置く形が一般的です。ただし種目の並び順を比較して効果の差を検証した研究は、当サイトでは確認できていません。 現場の慣行として扱ってください。
セット数を数えるときの注意点として、ディップスは大胸筋と上腕三頭筋の両方を使います。 ベンチプレスやプッシュダウンと同じ週に行う場合、ACSM 2026年版の「筋群あたり週約10セット」はそれらの合計で計算してください。腕立て伏せも同じ2つの筋群を使うため、同じ合計に入ります。
10. ディップスの回数に関するよくある質問(FAQ)
- ディップスは何回やればいいですか?
-
8〜12回で限界が来る負荷を2〜3セットが出発点です。回数はACSM 2009年版が初心者向けに示していた範囲(8〜12RM)、セット数は2026年版の「1種目あたり2〜3セット」に沿った設定です。12回以上できるなら加重、8回できないなら足を床につけるなどして負荷を下げてください。
- ディップスは何セットが最適ですか?
-
1種目あたり2〜3セットがACSM 2026年版で示された範囲です。筋肥大を狙う場合の「筋群あたり週約10セット」は、ディップス単体ではなく大胸筋・上腕三頭筋を使う種目の合計で数えます。週のセット数が多いほど筋量の増加が大きいという関係は確認されていますが、上限は特定されていません。
- 限界まで追い込まないと効果がないのですか?
-
そうではありません。限界まで追い込むかどうかを比較したメタ解析では、筋力・筋肥大のいずれも有意差がありませんでした(Grgic et al., 2022)。鍛錬者の筋肥大ではわずかに追い込んだ側が優位という結果もありますが、その差は小さいものです。
- セット間の休憩は何分ですか?
-
未訓練者は60〜120秒、筋力向上を狙う訓練経験者は2分超が目安とされています(Grgic et al., 2018)。ただしディップスを対象に比較した研究は確認できていません。次のセットで狙った回数ができるかで調整してください。
- 加重は何kgから始めればいいですか?
-
加重の重量設定を検証した研究は当サイトでは確認できていません。 数値の根拠がないため、回数を基準にしてください。自重で13回以上できるようになったら加重して8〜12回の範囲に戻す、という運用になります。
- ディップスは毎日やっていいですか?
-
必要な回復日数を示す一次情報を確認できていません。 ACSM 2009年版の推奨はトレーニング全体として週2〜3回(初心者)です。連日行って2日目の回数が明確に落ちるなら、間隔を空ける判断になります。
- どこまで深く下げればいいですか?
-
深さを比較した研究は確認できていません。 上位の解説記事でも「肘90度より深く」と「90度まで」で正反対の指示が出ています。肩に違和感が出ない範囲で、毎回同じところまで下げることを優先してください。
- ディップスが1回もできません。
-
負荷を下げる方法(足を床につける、バンドを使う、アシストマシン)と、ディップス以外の代替種目を種類と代わりになる種目の記事にまとめています。
- 何回できたら普通ですか?
-
「平均何回」という数値表は当サイトでは採用していません。 出所がクラウドソース型のデータベースか、集計方法が公開されていない一般書だからです。前回より1回増えているか、同じ回数を同じ深さでできているかを指標にしてください。
11. まとめ
ディップスの回数とセット数は、8〜12回で限界が来る負荷を2〜3セットが出発点です。ただしこれはレジスタンストレーニング全般の原則から導いたもので、ディップスを対象に回数を比較した研究はありません。
実践面では次の3点を押さえてください。
- 負荷は「回数」で管理します。 自重種目では重量を選べないため、13回以上できたら加重、8回できないなら負荷を下げるという形で範囲に収めます。
- 限界まで追い込む必要はありません。 メタ解析では筋力・筋肥大のいずれにも有意差が出ていません。動作が明確に遅くなったらそのセットを終える、という基準で足ります。
- 深さと下ろす位置は、毎回同じにします。 深さの正解は決まっていませんが、条件を変えないことで記録が比較できるようになります。
情報を読むときの視点として、もう1点。この種目については「10回×3セット」「オールアウトさせろ」「前傾すれば胸に効く」という指示が広く流通していますが、出典を示した記事はほとんどありません。 追い込みについてはメタ解析が「必要とは思われない」と結論しており、前傾の効果についてはディップスを対象にした研究が見つかりません。数字を断定している説明を見かけたら、その根拠が示されているかを確認してください。
種類(バリエーション)と、ディップスができないときの代替種目はディップスの種類と代わりになる種目の記事にまとめています。
