アダクターとアブダクターの違い|内ももマシンで脚痩せはできるのか

「アダクター」で検索すると、「アダクターとアブダクターの違いは何ですか?」という質問が検索結果の最上位に出てきます。

2026年8月14日時点で取得できた上位4記事のうち、この問いに答えた記事は0件でした。

名前が1文字違いで、しかも同じ1台のマシンを内と外に使い分けることが多いため、混同されています。この記事では、まずこの違いから整理します。

そして、このキーワードのもう1つの中心にあるのが「脚痩せ」です。上位記事の1つはタイトルで「脚痩せはできる?」と問いを立てながら、答えを書いていません。

先に、この記事の要点

(1)名前の由来に、解剖学上の非対称があります1章

(2)「脚痩せ」については、否定的なメタ解析と、それに反する研究の両方があります5章

(3)「内ももが細くなった」という体感には、別の説明がつきます5-3

(4)「脚のすき間」は、通説も、それを否定する説明も、どちらも根拠を確認できませんでした6章

やり方は7章、重量・回数・頻度は8章です。

目次

1. アダクターとアブダクターの違い

アダクターとアブダクターの違い

動きが逆です。

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動き主に働く筋
アダクター(この記事)脚をに閉じる(股関節内転)内転筋群
アブダクター脚をに開く(股関節外転)中臀筋・小臀筋

メーカーや販売店は「アブダクター・アダクター」と併記した1台2役の製品として扱っています。 同じ1台をパッドの位置で内外に使い分けるためです。一方、ジムの解説記事は片側だけを書き、もう一方に触れていません。 上位4記事のうち両方を扱っていたのは1件のみでした。

1-1. 名前の由来

adductor と abductor は、どちらもラテン語の dūcere(導く)を含みます。

由来
adductorラテン語 addūcere(〜へもたらす)= ad-(〜へ)+ dūcere(導く)
abductラテン語 abdūcereab-(離れて)+ dūcere(導く)

出典:The American Heritage Dictionary of the English Language, Fifth Edition(©2022 HarperCollins、原典

「ad-(〜へ)」と「ab-(離れて)」の違いが、内に寄せるか外に離すかの違いです。 なお abductor は同辞書第5版の見出し語には収載されておらず、abduct に行為者を表す接尾辞 -or がついた形になります。

1-2. 解剖学上の非対称があります

ここに、上位記事が触れていない事実があります。

解剖学用語の国際基準である Terminologia Anatomica 第2版を確認したところ、「musculus abductor(外転筋)」と名のつく筋は、手(母指・小指)と足(母趾・小趾など)にしか存在しませんでした。

股関節には、「abductor」という名前の筋が1つもありません。

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筋の名前命名の由来
股関節を外に開く筋中臀筋・小臀筋・大腿筋膜張筋位置(臀部・大腿の筋膜)
股関節を内に閉じる筋大内転筋・長内転筋・短内転筋 ほか動作(adductor=内転筋)

出典:Terminologia Anatomica, Second Edition (2.07), FIPAT/IFAA, 2019年(CC BY-ND 4.0、PDF

つまり「アブダクターマシン」は動作の名前(abduction=外転)から、「アダクターマシン」は動作の名前であると同時に筋の名前(adductor=内転筋)からきています。 片方だけが筋の名前と一致しているという非対称があります。

2. どの筋を使うのか

上位4記事はすべて「内転筋」「内ももの筋肉」という総称で止まっており、個別の筋名を1つでも挙げた記事は0件でした。

内転筋群は複数の筋からなります。

補足
大内転筋(だいないてんきん)内転筋群で最も大きい。股関節を伸ばす働きも持ちます
長内転筋
短内転筋
薄筋(はっきん)膝もまたぎます
恥骨筋

この「大内転筋が股関節を伸ばす働きも持つ」という点が、次の章につながります。

2-1. 内転種目の筋活動

男性24名(21.5±2.0歳、週3回30分以上の運動習慣あり)を対象に、6種目で長内転筋の筋電図を測定した研究があります。

種目ピーク %MVIC
サイドライイング内転(横向きで下の脚を上げる)60.1(16.2)
ボールスクイーズ(両膝でボールを挟む)36.0(18.0)
サイドランジ26.7(13.1)
スイスボール立位内転17.3(9.7)
ローテーショナルスクワット15.8(10.7)
スモウスクワット13.7(7.6)

統計的に大きかったのはサイドライイング内転とボールスクイーズのみで、著者は残る4種目を互換的とみなせると述べています。

「種目が複雑になり、股関節以外の関節を使い始めるほど、長内転筋の活動は減少した」

出典:Delmore RJ, Laudner KG, Torry MR. J Sport Rehabil, 23(2), 79-87, 2014年(PMID: 23945760、PubMed

この研究を読むときの注意(4点)

(1)座位のアダクターマシンは含まれていません。

(2)測定されたのは長内転筋のみです。 大内転筋・短内転筋・薄筋は測られていません。

(3)単回の筋電図測定です。 長期的にどの筋が太くなるかを示したものではありません。

(4)著者が挙げた限界: 表面筋電図では大内転筋・短内転筋・薄筋からの混入を避けられないこと、全被験者に同一の負荷(約2.3kgのアンクルウェイト+中程度のバンド)を用いて個人の筋力差を考慮していないこと、無症候者のみを対象としたこと。なお抄録は対象を “college-age students” と書き性別を明示していませんが、本文では男性24名と記載されています。この論文には利益相反・資金源の節がありません。

なお、座位のアダクターマシンそのものを主対象とした筋電図研究を、当サイトでは確認できませんでした(2026年8月14日時点)。この章で挙げた研究も、次章で挙げる研究も、いずれもこのマシンを種目に含んでいません。

3. 股関節を伸ばす種目でも内転筋は増えています

これは上位4記事のいずれも扱っていない論点です。

MRIで筋の体積を測った長期の研究が2件あり、どちらも股関節を伸ばす種目で内転筋が増えたことを報告しています。

3-1. レッグプレス

未鍛錬の健常若年成人17名(男性11名・女性6名、23.3±4.0歳)を対象に、片脚に膝伸展、反対脚にレッグプレスを割り付けて12週間・週2回(70%1RM×10回×5セット)行い、MRIで筋体積を測定した研究です。

レッグプレスのみが大内転筋の体積を増やしました(+6.2%)。膝伸展では変化しませんでした。

ただし、有意に増えたのは大内転筋のみで、長内転筋・短内転筋・恥骨筋・薄筋はいずれもほぼ変化していません(±0.1%以内)。

出典:Kinoshita M, et al. Med Sci Sports Exerc, 2026年(PMID: 41630124、全文 )。利益相反なしと明記されています。 資金はヤマハ発動機スポーツ振興財団。

著者は限界として、「両種目とも開始肢位で股関節角度を90度に標準化したことが、筋肥大の反応に影響した可能性がある」「参加者は全員が事前に未鍛錬者であったため、レジスタンストレーニング経験者への一般化可能性は不確かである」と明記しています。

3-2. スクワットの深さ

1年以上定期的な運動をしていない健常男性17名を対象に、フルスクワット(膝屈曲約140度まで)とハーフスクワット(約90度まで)を10週間・週2回行い、MRIで筋体積を測定した研究です。

内転筋群の体積変化
フルスクワット+6.2 ± 2.6%
ハーフスクワット+2.7 ± 3.1%

群間の差は有意でした(p=0.026)。

著者は考察で、「フルスクワットで股関節と膝が深く屈曲するとき、内転筋群が股関節伸展筋として機能する可能性がある」と述べています。

出典:Kubo K, Ikebukuro T, Yata H. Eur J Appl Physiol, 119, 1933-1942, 2019年(原典 )。利益相反なしと明記されています。 資金は日本学術振興会科研費。

この研究の限界(著者が明記)

大内転筋・長内転筋・短内転筋の境界を同定できなかったため、内転筋群を個別に分けて解析していません。したがってこの研究から特定の筋を名指しすることはできません。

その他の限界として、フルスクワットのほうが筋収縮の持続時間が長いこと(総仕事量には有意差なし)、機械的仕事量は推定値であること、つま先の外旋角度を指示していないこと、サンプルが小さいことを挙げています。

3-3. この2つから言えること

どちらの研究も、アダクターマシンによる内転種目と比較したものではありません。 したがって「内転種目より股関節を伸ばす種目のほうが優れている」とは書けません。

書けるのは次までです。 股関節を伸ばす種目でも内転筋が増えたという報告が2件あり、スクワットレッグプレスを行っている人は、内転筋にも刺激が入っている可能性があります。

4. 鼠径部の痛みとの関係

内転筋のトレーニングは、鼠径部痛(グロインペイン)との関連でよく語られます。ただし「治療」と「予防」を分ける必要があります。

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目的研究結果
治療Hölmich 1999(Lancet)既に長期の内転筋関連鼠径部痛があるアスリート68名(罹病期間の中央値40週)で、能動的トレーニング群23名 vs 理学療法群4名が無痛でスポーツ復帰。オッズ比12.7(95%CI 3.4〜47.2)
予防Hölmich 201055クラブ1211名のクラスターRCT。ハザード比0.69(95%CI 0.40〜1.19)=31%減だが統計的に有意ではない
予防Harøy 2019(BJSM)セミプロ男子サッカー35チーム652名。オッズ比0.59(95%CI 0.40〜0.86、p=0.008)。ただしアウトカムは質問票による自己申告の有病率であり、医学的に診断された傷害発生率ではありません
予防Esteve 2015(メタ解析)7つのRCT・4191名。相対リスク0.81(95%CI 0.60〜1.09)=有意な減少なし

出典:Hölmich P, et al. Lancet, 353(9151), 439-443, 1999年(PMID: 9989713、PubMed )/Hölmich P, et al. Scand J Med Sci Sports, 20(6), 814-821, 2010年(PMID: 19883386、PubMed )/Harøy J, et al. Br J Sports Med, 53(3), 150-157, 2019年(PMID: 29891614、PubMed )/Esteve E, et al. Br J Sports Med, 49(12), 785-791, 2015年(PMID: 25730819、PubMed

いずれも抄録のみの確認で、著者が明記した限界・資金源は確認できていません(Harøy 2019 は「利益相反なし」と明記)。なお Esteve 2015 は2015年発表のため、Harøy 2019 を含んでいません。

まとめると、治療については大きな効果を報告したRCTが1件ありますが、予防については結論が定まっていません(有意差なしとした試験、有意だが自己申告のアウトカムを用いた試験、メタ解析では有意差なし)。

この記事では、この種目を「鼠径部の痛みを予防できる」とは書きません。 また上記の対象は競技アスリート(Hölmich 1999)およびサッカー選手(Hölmich 2010、Harøy 2019)であり、ジムでトレーニングする一般の人を対象としたものではありません。

5. 「脚痩せ」はできるのか

上位記事の1つは、タイトルで「アダクターで脚痩せはできる?」と問いを立てながら、答えを書いていません。 他の3記事も、この問いに答えていませんでした。

答えは「特定の部位を鍛えて、その部位の脂肪だけを減らすこと(部分痩せ)」が成立するかどうかにかかっています。

5-1. 否定的なメタ解析

片方の手足だけを鍛え、反対側を対照とした研究を集めたシステマティックレビュー・メタ解析があります。13研究・1,158名(14〜71歳、男女)、37の比較を統合したものです。

統合効果量は ES = −0.03(95%CI −0.10〜0.05、p = 0.508)で、部分痩せは認められませんでした。 異質性は低く(I²=24.3%)、出版バイアスもありませんでした。37の比較のうち17が鍛えた側有利、20が鍛えていない側有利で、方向が定まっていません。

「局所の筋トレーニングは、局所の脂肪組織に影響しなかった。すなわち部分痩せは、集団の特性にも運動プログラムにも関係なく認められなかった。部分痩せという通説は、おそらく希望的観測と、都合のよいマーケティング戦略に由来する」

含まれる下肢の研究7件は、すべて陰性でした。

出典:Ramirez-Campillo R, Andrade DC, Clemente FM, Afonso J, Pérez-Castilla A, Gentil P. Human Movement, 23(3), 1-14, 2022年(DOI: 10.5114/hm.2022.110373)。「著者は財務的利害を持たず、本研究から財務的利益を受けていない」「利益相反なし」と明記されています。

このメタ解析の3つの限界

(1)PubMed/MEDLINEに収載されていません。 掲載誌がMEDLINE未収載のためです。

(2)適格基準が「片方の手足を鍛え、反対側を対照とする介入」に限られています。 そのため腹部(体幹)の研究は設計上すべて除外されており、腹部の部分痩せについてはこの解析からは何も言えません。

(3)筋肉の中の脂肪(筋内脂肪)は定義から除外されています。 著者自身が本文で「筋内脂肪を考慮するなら、皮下脂肪とは逆に局所的な減少が起こりうる」と認めています。

5-2. ただし、反証もあります

部分痩せを肯定した研究も存在します。この記事はそれを隠しません。

過体重の男性16名(各群8名、43±9歳、BMI 29.8±3.3)を対象とした10週間のRCTです。介入群はトレッドミル27分+体幹回旋4×4分+腹筋クランチ4×4分、対照群はトレッドミル45分のみ。DXAで測定しました。

体幹の脂肪量は介入群で1,170±1,093 g(7%)減り、対照群は変化しませんでした(群間差697 g、3%、p<0.05)。総脂肪量と体重は両群で同程度に減っています。

「腹部持久性運動はトレッドミル走行より多くの局所脂肪を利用し、成人男性において部分痩せが存在することを示している」

出典:Brobakken MF, et al. Physiol Rep, 11(22), e15853, 2023年(PMID: 38010201、全文 )。「利益相反なし」「資金提供なし」と明記されています。 この論文は撤回されていません。

著者自身が本文で認めている弱点

「介入群の1回のトレーニングは合計84分で、対照群の中強度トレッドミル介入のほぼ2倍の時間であった」

「食事の統制を測定に含めていれば、研究デザインは強化されただろう」

「群間の等化を、集団単位ではなく個人単位で行えば、デザインはさらに改善しただろう」

「内臓・皮下・筋内の脂肪を区別するデータを欠いており、どの脂肪貯蔵庫が動員されたかは不明である」

「所見が女性に当てはまるかは不明である。本モデルは他の身体部位でも再現されるべきである」

したがって現時点で言えるのは、「高品質のメタ解析は否定的だが、肯定的な結果を報告した小規模なRCTも存在する。ただしいずれも設計上の弱点を著者自身が認めている」までです。

5-3. 「測ると薄くなる」ことはあります

ここが最も重要な部分です。

健康な中年女性10名(24〜29歳)を対象に、5週間・毎日、右膝伸展の最大等速性収縮を行い、超音波・キャリパー・脂肪細胞の顕微鏡計測の3つで測定した研究があります。

「超音波およびキャリパーで測定した皮下組織厚は減少し、筋厚は鍛えた脚でのみ増加した。……皮下脂肪組織厚の減少は脂肪細胞サイズの有意な減少を伴っておらず、おそらくは下層の筋肥大に二次的な幾何学的要因によるものであった」

「結論として、局所的な動的筋力トレーニングを、鍛えている筋の上の脂肪貯蔵庫を局所的に空にするために用いることは、ほとんどできない」

出典:Krotkiewski M, et al. Eur J Appl Physiol Occup Physiol, 42(4), 271-281, 1979年(PMID: 161225、PubMed )。抄録のみの確認で、利益相反・資金源は確認できていません。

つまり「測ると薄くなる。しかし脂肪細胞は減っていない」という結果です。 著者は、その下の筋が膨らんだことによる幾何学的な変化だろうと説明しています。

「内ももが引き締まった気がする」という体感を、この記事は否定しません。ただしそれが脂肪が減ったことを意味するとは限りません。

5-4. 測定方法によって結論が変わります

同じ被験者を、キャリパーとMRIの両方で測った研究があります。

104名(男45・女59、24.1歳)を対象に、12週間・週2回、非利き腕だけを鍛えた研究です(種目にはキックバックやオーバーヘッドエクステンションが含まれます)。

「キャリパーの所見は、男性では部分痩せが起きたが女性では起きなかったことを示す。対照的にMRIでは性別によらず全身性の皮下脂肪減少が見出され、レジスタンストレーニングの結果として部分痩せは起こらないという見解を支持した」

出典:Kostek MA, et al. Med Sci Sports Exerc, 39(7), 1177-1185, 2007年(PMID: 17596787、PubMed )。資金は米国立衛生研究所。抄録のみの確認で、利益相反は確認できていません。

5-1のメタ解析の著者は、この差を次のように定量しています。 キャリパーでは鍛えた腕が3〜14%(平均7.5%)減ったのに対し、MRIでは0〜7%(平均2.8%)と約3分の1でした。

したがって、キャリパーや超音波で「減った」という結果を、部分痩せの根拠として使うことはできません。

5-5. 結論

この記事では、この種目で内ももの脂肪が選択的に減るとは書きません。

書けるのは次の3点です。

  1. 部分痩せを否定した高品質のメタ解析があります5-1
  2. 肯定した小規模RCTもありますが、著者自身が設計上の弱点を認めています5-2
  3. 「細くなった」という測定結果は、脂肪ではなく筋の変化を反映している可能性があります5-3

6. 「脚のすき間」について

上位記事の1つは、「脚のすき間ができやすくなる」と書いていました。根拠は示されていません。

一方で、「脚のすき間は骨盤の幅で決まるから、トレーニングでは変えられない」という説明も流通しています。

当サイトで調べた結果、どちらの主張にも一次データが見つかりませんでした。

6-1. 実測した研究が存在しません

太ももの間のすき間を実測し、骨盤の幅・大腿骨の角度・大腿骨の形態と統計的に関連づけた研究を、1件も確認できませんでした。 PubMedで12のクエリを確認した結果です(2026年8月14日時点)。

「thigh gap」を扱う学術文献は全部で5件しかなく、そのうち主題としているのは1件のみでした。

そしてその1件は、実在の人体を一切測定していません。 女性モデルの写真1枚を画像加工し、すき間の幅を4段階に変えた画像を994名に見せて魅力度を評価させた研究です。

出典:Henn D, et al. Aesthet Surg J Open Forum, 7, ojaf138, 2025年(PMID: 41332495、全文 )。「利益相反なし」「資金なし」と明記されています。

この論文には「thigh gap を得ることは多くの人にとって達成不可能である。それは BMI ではなく、骨盤の幅・形状・筋の構造といった解剖学的要因によって決まるからである」という記述があります。

ただしその引用元を追跡したところ、引用文献は2件のみで、1件は一般向けの学術書籍、もう1件は大腿の輪郭を写真解析した研究ですが、測定項目に大腿間距離が含まれていませんでした。

つまり「骨盤幅で決まる」という説明も、測定データに裏付けられたものではありません。

6-2. 「女性は骨盤が広い」も、測る部位で反転します

公的な人体計測データを2つ確認しました。

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計測項目米陸軍 ANSUR II産総研 AIST(日本、1991-92)
腸骨稜幅(骨盤の上部・骨性)女性 27.33±2.23 cm / 男性 27.54±1.75 cm男性 272.2±16.1 mm / 女性 263.0±15.4 mm(男性が有意に広い)
大転子間幅(骨盤の下部)女性 318.2±14.3 mm / 男性 306.7±14.3 mm(女性が広い)
殿幅(軟部組織込み)女性 35.38±2.67 cm / 男性 34.57±2.42 cm男性 327.8±16.5 mm / 女性 330.7±16.3 mm(有意差なし

出典:Gordon CC, et al. NATICK/TR-15/007, U.S. Army Natick Soldier RD&E Center, 2014年(男性4,082名・女性1,986名、PDF )/産業技術総合研究所 AIST人体寸法データベース1991-92(青年男性217名・女性204名、18〜29歳、原典

この表から言える2点

(1)「女性は骨盤が広い」は、どこを測るかで結論が変わります。 骨盤の上部(腸骨稜幅)は米軍データでほぼ同じ、日本人データではむしろ男性が広いという結果です。骨盤の下部(大転子間幅)は女性が広くなっています。

(2)同性内の個人差のほうが、男女差より圧倒的に大きいです。 米軍データの女性の腸骨稜幅は、下位5%が23.7 cm、上位99%が33.2 cmで、幅が約10 cmあります。対して男女の平均差は0.2 cmです。

なお前者は米陸軍の構成員(体力・体格基準による選抜あり)を対象としており、一般の人口を代表しません。 後者は1991-92年の調査で、現在の日本人の体格を反映していない可能性があります。AIST データの大転子間幅の女性は n=30 と小標本です。

また「女性は大腿骨の角度が違うから」という説明も見かけますが、大腿骨頸体角に統計的な性差は認められていません(男性 130.5±7.2° vs 女性 133.0±7.3°、p=0.2)。骨盤の下部(恥骨弓角・坐骨間距離)には明確な性差があります。

出典:Ahmad ほか, J Clin Med, 2023年(PMID: 36836138、全文 )。「外部資金なし」「利益相反なし」と明記されています。 著者は限界として、2次元X線解析で大腿骨の捻転を評価していないこと、臨床症状のデータを欠くことを挙げています。

6-3. この記事の立場

「脚のすき間ができる」とも「骨格で決まるからできない」とも、当サイトは書きません。どちらも一次データを確認できませんでした。

なお、上記の魅力度評価の論文は「食事と運動で thigh gap を得ようとする願望は、低栄養、オーバートレーニング、神経性やせ症や身体醜形障害への傾きといった有害な影響と関連づけられてきた」とも記載しています。

7. やり方

アダクター(内転)マシンの動作

上位4記事の共通項は少なく、全記事が一致した項目はありませんでした。

7-1. セットアップ

  1. シートに深く座ります(浅く腰掛けない)
  2. 背中を丸めず、骨盤を立てて座ります(上位2件が言及)
  3. 背中・肩をシートにつけます(上位2件が言及)
  4. パッドを太ももの内側に当て、開いた位置から始めます

7-2. 動作

  1. 脚を閉じます
  2. 反動を使わずに、コントロールして戻します(上位3件が言及。この記事で最も多くの記事が一致した項目)

上位記事の1つは、動作のテンポとして「1・2のリズムで閉じ、3・4・5のリズムで戻す」(閉じる2カウント/戻す3カウント)を示していました。 これは戻す局面を長くとる指示です。ただしその理由は書かれていません。この種目の動作テンポを比較した資料も、当サイトでは確認できませんでした(2026年8月14日時点)。

呼吸については、上位記事の1つが「閉じる時に吐き、戻す時に吸う」としています。

7-3. 開く側の可動範囲について

上位4記事のうち、どこまで開いてよいかの上限を示した記事は0件でした。

そして当サイトで調べた結果、「このマシンで内転筋を過度に伸ばすと危険である」ことを示した研究・症例報告・公的な注意喚起を、1件も確認できませんでした。 PubMedの3つの検索式とWebの4つの検索式で確認し、ACSM・NSCAの公式ポジションスタンドにも当該マシンへの言及は見つかりませんでした(2026年8月14日時点)。

同時に、「マシンだから安全」とも言えません。安全性を積極的に検証した研究も0件でした。

内転筋の肉離れについて、通説とは違う点

「内転筋の肉離れは股関節を強制的に外転させられて起きる」という説明を見かけますが、原典はそう書いていません。

プロのサッカー選手17名の受傷映像を解析した研究は、次のように報告しています。

「方向転換とリーチングによる受傷は閉鎖性運動連鎖(59%)に分類され、股関節の伸展と外転に外旋を伴う肢位を特徴とした」

「急性長内転筋損傷の根本的な受傷機転は、急速な筋伸張の最中における急速な筋活動であるように思われる」

71%が非接触の状況で、53%はプレーの変化への素早い反応に続いて発生しています。

出典:Serner A, et al. Br J Sports Med, 53(3), 158-164, 2019年(PMID: 30006458、PubMed )。「利益相反なし」と明記。抄録のみの確認です。

つまり受傷は、伸展・外転・外旋という3つの面が組み合わさった肢位で、筋が引き伸ばされながら急激に収縮する瞬間に起きています。競技中の高速・非接触・予測不能な切り返しという文脈であり、マシンでゆっくり動かす場面とは条件が異なります。

参考までに、日本の公的な基準では股関節外転の参考可動域は0〜45度とされています。 ただし原典は「関節可動域は年齢、性、肢位、個体による変動が大きいので、正常値は定めず参考可動域として記載した」と明記しています。

出典:日本リハビリテーション医学会・日本整形外科学会・日本足の外科学会「関節可動域表示ならびに測定法」2022年4月1日改訂(原典

この記事としては、痛みや強い突っ張りを感じる手前で止めることを勧めます。 ただしこれは研究に基づく基準ではありません。 この方法で傷害を防げることを示した資料も、当サイトでは確認できていません。根拠がない以上、痛みが出る手前で止めるという一般的な原則以上のことは書けない、というのがこの記事の立場です。

7-4. ストレッチで予防できるという根拠は確認できませんでした

「柔軟性を高めれば肉離れを防げる」という説明を支持する一次エビデンスを、当サイトでは確認できませんでした。

参考になるのは、スポーツ傷害全般を対象としたメタ解析です。25のRCT・26,610名・傷害3,464件を統合したもので、次のように報告しています。

「層別曝露解析は、ストレッチについて有益な効果がないことを証明した(RR 0.963、95%CI 0.846〜1.095)。一方、複合的介入、固有受容感覚トレーニング、筋力トレーニング(RR 0.315、95%CI 0.207〜0.480)は効果が増す傾向を示した」

この結果はスポーツ傷害全般についてのものであり、内転筋の肉離れや鼠径部の傷害だけを対象としたものではありません。 したがって「内転筋の肉離れにストレッチが効かない」「内転筋トレーニングが内転筋の肉離れをRR 0.315に減らす」という意味には読めません。

出典:Lauersen JB, Bertelsen DM, Andersen LB. Br J Sports Med, 48(11), 871-877, 2014年(PMID: 24100287、PubMed )。著者は「傷害予防に関する全体の効果推定値は異質であった」と限界を明記しています。抄録のみの確認で、利益相反・資金源は確認できていません。

鼠径部の傷害に絞った研究としては、男性アマチュアサッカー選手508名を前向きに追跡したものがあります。 「急性鼠径部傷害の既往と内転筋の筋力低下が、新たな鼠径部傷害の有意なリスク因子である」と報告されています(内転筋の筋力低下 調整オッズ比 4.28、95%CI 1.31〜14.0)。ただしこれは観察研究であり、筋力を高める介入を行った試験ではありません。

出典:Engebretsen AH, et al. Am J Sports Med, 38(10), 2051-2057, 2010年(PMID: 20699426、PubMed )。股関節の可動域や柔軟性がリスク因子として有意だったかは、抄録に明示されておらず確認できていません。

8. 回数・セット数・頻度・重量

この種目を対象に回数・セット数・頻度・重量を比較した研究を、当サイトでは確認できていません。 以下はトレーニング全体または筋群単位で示された一般的な指針です。

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項目目安出典
回数Novice(初心者)で8〜12RMACSM 2009年版
セット数筋群あたり週約10セットが筋肥大の目安ACSM 2026年版
頻度週2〜3回(Novice、トレーニング全体として)ACSM 2009年版
負荷の漸増目標回数より1〜2回多くできるようになったら2〜10%増やすACSM 2009年版
セット間の休憩筋力3〜5分/筋肥大1〜2分/筋持久力90秒未満ACSM 2009年版

出典:American College of Sports Medicine. Med Sci Sports Exerc, 41(3), 687-708, 2009年(PMID: 19204579、PubMed )/ACSM Position Stand(Currier BS ほか、統括 Phillips SM)Med Sci Sports Exerc, 58(4), 2026年(PMC12965823の全文

1回あたりのセット数について。 上の「筋群あたり週約10セット」は週の合計です。週2回行うなら1回あたり3セット前後、週3回なら1回あたり3セット強が、この週合計の目安に収まります。 なお上位4記事はセット数を1件も書いていません。これは週合計の指針から逆算した数字で、この種目のセット数を検証した研究ではありません。

ACSM 2009年版・2026年版を使ううえでの前提

ACSMのポジションスタンドは、健常成人を対象とした研究群をまとめて作られた、トレーニング全体に対する指針です。 特定の種目について最適な重量・回数・頻度を示したものではありません。

上の数値はこの種目に対して検証されたものではなく、出発点として使うものです。

上位4記事のうち、回数を書いていたのは1件(10〜15回できる重さ)のみでした。セット数・インターバル・頻度を書いた記事は、いずれも0件です。

8-1. 重量について

上位4記事のうち重量を書いていたのは2件で、その数値が2〜3倍食い違っています。

出所提示している重量
大手フィットネスクラブ男性15kg/女性10kg
ジムの解説記事20〜30kgぐらいが目安(男女の区別なし)

どちらも根拠を示していません。

さらに、同じ1台のマシンの外転側(アブダクター)については、別のサイトが「初心者:女性20kg/男性35kg」としています。内転側の女性10kgに対して2倍です。

同じマシンで外転が内転の2倍の重量になるという主張を裏づける資料に、当サイトは到達できませんでした。 股関節の外転筋と内転筋の筋力比についての一般的な基準値も、当サイトでは確認できていません(2026年8月14日時点)。

したがって、他サイトの数値をそのまま目安にすることは推奨しません。 上の表の原則(8〜12回で限界になる重量から始め、1〜2回多くできるようになったら2〜10%増やす)に従って自分で決めてください。

9. アブダクター(外転側)との使い分け

アダクション(内転)とアブダクション(外転)の両方を行うべきかを比較した資料を、当サイトでは確認できませんでした(2026年8月14日時点)。外転筋と内転筋の筋力比をいくつに保つべきかという基準についても、同様に確認できていません。

スクロールできます
動き主に働く筋この記事
アダクション脚を内に閉じる内転筋群この記事
アブダクション脚を外に開く中臀筋・小臀筋アブダクターマシンの記事

なお、股関節外転トレーニングによって臀部の形が変わったことを画像で確認した研究を、当サイトでは1件も確認できていません。 詳しくはアブダクターマシンの記事で扱っています。

10. よくある質問

アダクターとアブダクターの違いは何ですか?

動きが逆です。 アダクターは脚を内に閉じる動き(股関節内転)で内転筋群を、アブダクターは脚を外に開く動き(股関節外転)で中臀筋・小臀筋を使います(1章)。多くのジムでは同じ1台のマシンをパッドの位置で使い分けます。名前はラテン語の ad-(〜へ)と ab-(離れて)の違いに由来します。 なお解剖学用語の国際基準では、股関節に「abductor」という名前の筋は1つも存在しません1-2)。

アダクターで脚痩せはできますか?

この種目で内ももの脂肪が選択的に減るとは、当サイトでは書きません。 部分痩せについては、13研究1,158名を統合したメタ解析が否定的な結果(統合効果量 −0.03、p=0.508)を報告しています(5-1)。ただし肯定的な結果を報告した小規模RCTも存在し、その著者自身が設計上の弱点を認めています5-2)。

続けたら内ももが細くなった気がします。

その体感を否定するものではありません。ただし脂肪が減ったとは限りません。 5週間の研究で、超音波とキャリパーでは皮下組織の厚みが減ったのに、脂肪細胞のサイズは有意に減っていなかったという報告があります。著者はその下の筋が膨らんだことによる幾何学的な変化だろうと説明しています(5-3)。

脚のすき間はできますか?

できるとも、できないとも、当サイトでは書けません。 太ももの間のすき間を実測して骨格と関連づけた研究を、1件も確認できませんでした(6-1)。「トレーニングでできる」も「骨盤の幅で決まるからできない」も、どちらも一次データの裏づけがありません。 なお「女性は骨盤が広い」という説明も、測る部位によって結論が反転します(6-2)。

どこまで脚を開いていいですか?

開く側の上限を示した上位記事は0件でした。 そして「このマシンで内転筋を過度に伸ばすと危険である」ことを示した研究・症例報告・公的な注意喚起も、1件も確認できませんでした。同時に「マシンだから安全」とも言えません7-3)。痛みや強い突っ張りを感じる手前で止めてください。 これは可動域の個人差が大きいことを踏まえた判断で、研究に基づく数値ではありません。

内転筋を鍛えると鼠径部の痛みを防げますか?

「予防できる」とは書けません。 治療については大きな効果を報告したRCTが1件ありますが(既に痛みのあるアスリートでオッズ比12.7)、予防については結論が定まっていません(有意差なしとした試験、有意だが自己申告のアウトカムを用いた試験、メタ解析では有意差なし)。詳しくは4章をご覧ください。対象は競技アスリートおよびサッカー選手で、ジムでトレーニングする一般の人ではありません。

ストレッチをしておけば肉離れを防げますか?

支持する一次エビデンスを確認できませんでした。 スポーツ傷害全般を対象としたメタ解析(25のRCT・26,610名)は、ストレッチについて有益な効果がないことを報告しています(RR 0.963)。一方、筋力トレーニングは効果を示しています(RR 0.315)。ただしこれは傷害全般の結果で、内転筋の肉離れに限定した結果ではありません7-4)。

何回・何セット、週に何回やればいいですか?

この種目を対象に検証した研究は確認できていません。 ACSM 2009年版が初心者向けに示している8〜12回で限界になる重量、週2〜3回が出発点になります。セット数は、週合計の目安(筋群あたり週約10セット)から逆算すると、週2回なら1回3セット前後になります8章)。いずれもトレーニング全体に対する一般的な指針で、この種目について検証されたものではありません。 なお上位4記事のうち、セット数・インターバル・頻度を書いた記事は0件でした。

重量はどれくらいですか?

上位記事の数値が2〜3倍食い違っており、どちらも根拠を示していません8-1)。8〜12回で限界になる重量から始めてください。

スクワットをやっていれば内転筋は鍛えられますか?

股関節を伸ばす種目でも内転筋が増えたという報告が2件あります3章)。フルスクワットは内転筋群の体積を+6.2%増やし、ハーフスクワット(+2.7%)より有意に大きい結果でした。ただしどちらの研究も、アダクターマシンによる内転種目と比較したものではありません。「どちらが優れている」とは言えません。

11. まとめ

  1. アダクターは脚を内に閉じる動き、アブダクターは外に開く動きです。 名前はラテン語の ad-(〜へ)と ab-(離れて)に由来し、股関節には「abductor」という名の筋が1つも存在しないという非対称があります
  2. 上位4記事は個別の筋名を1つも挙げていませんでした。 内転筋群は複数の筋からなり、大内転筋は股関節を伸ばす働きも持ちます
  3. 股関節を伸ばす種目(レッグプレス・フルスクワット)で内転筋が増えたという報告が2件あります。 ただし内転種目と比較したものではありません
  4. 「脚痩せ」については、否定的なメタ解析と、肯定的な小規模RCTの両方があります。 この記事では、この種目で内ももの脂肪が選択的に減るとは書きません
  5. 「細くなった」という測定結果は、脂肪ではなく筋の変化を反映している可能性があります
  6. 「脚のすき間」は、通説も、それを否定する説明も、どちらも一次データを確認できませんでした
  7. 開く側の可動範囲について、危険性を示す資料も安全性を示す資料も存在しません

同じマシンの外転側はアブダクターマシンの記事、股関節を伸ばす種目はスクワットレッグプレスヒップスラスト、その他の脚のマシンはレッグエクステンションレッグカールの記事があります。ジム全体のメニューはジムの筋トレメニュー、マシンの種類はトレーニングマシンの種類一覧にまとめています。

本記事で「上位記事」と書いている箇所は、2026年8月14日時点でGoogle検索(日本)の上位に表示されていた記事を指します。検索結果は日々変動するため、現在の表示順とは異なる場合があります。

痛みがある場合、既往がある場合、持病がある場合は、トレーニングの前に医師にご相談ください。 この記事は診断・治療を目的としたものではありません。

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この記事を書いた人

BULKFIT24(バルクフィット24)は、株式会社ビズファンが運営する24時間営業の完全無人型スポーツジムです。ビズファンは、経済産業省から「スマートSMEサポーター」に認定されており、ICTやIoT、インターネット広告に精通した企業です。

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